$あれも聴きたいこれも聴きたい-Lorin Maazel 私はローマに行ったことはないのですが、結構ローマ通です。なんといっても「テルマエ・ロマエ」を読みましたから。その上、映画まで見たんですよ!!!

 戯言はさておき、週に一度のクラシック・タイム、今週は、イタリアの作曲家レスピーギのローマ三部作のうち、「ローマの祭り」と「ローマの松」です。「祭り」はまあいいとして、「松」とはあんまりです。「おそ松くん」が頭に出てきて立ち去ってくれません。

 レスピーギは音楽の教科書に出てくるような人ではないので、全然知りませんでしたが、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したイタリアの作曲家・音楽学者・指揮者・教育者です。何でも古典主義者であり、印象主義の影響も受け、ロマン主義的な要素も持つと言う、私のような初学者には悪夢のような人です。

 しかし、聴こえてくる音はとても分かりやすい。写実的と言いますか、徹底した情景描写の音楽です。それも詩的というよりは散文的です。

 「祭り」は、4つの部分に分かれていて、それぞれ作者によってチルチェンセス、五十年祭、十月祭、主顕祭と標題がついています。それぞれのお祭りを描写した音楽になっていて、たとえば、チルチェンセスは、暴君ネロが囚人を猛獣に食い殺させるお祭りなので、金管が猛獣の咆哮を再現しています。

 「松」はもっと徹底していて、ウィキペディアから孫引きすると、たとえば第一楽章「ボルゲーゼ荘の松」では、「ボルゲーゼ荘の松の木立の間で子供たちが遊んでいる。彼らは輪になって踊り、兵隊遊びをして行進したり戦争している。夕暮れの燕のように自分たちの叫び声に昂闘し、群をなして行ったり来たりしている。突然、情景は変わり、第二部に曲は入る。」と作者が文章で説明しています。

 その説明に出てくるものがすべて音で表現されているわけですね。その第三楽章では、鳥のさえずりが出てくるのですが、これは本当にナイチンゲールの鳴き声を録音したものを使っています。こういう音を使った楽曲としては最初期のものです。今でも、この楽譜を借りるとそのテープもついてくるそうですよ。でも、そんなに複雑な鳴き声でもありませんから、日本でやる時にはぜひ江戸屋猫八師匠にやってもらいたいもんです。

 しかし、こういう発想はあまりポピュラー音楽にはない発想ですね。強いて言えば、横山ホットブラザーズ的です。

 そんな楽曲を奏でる指揮者は、ローリン・マゼール。ユダヤ・ロシア・ハンガリーの血を引く彼は幼少期にアメリカに移住してアメリカで活躍します。この人は早熟の天才で、何と指揮者デビューは8歳の時だと言います。凄いですね。私が8歳の時には、まだオーケストラなんて見たこともなかったです。

 この作品を録音した当時は、クリーブランド管弦楽団の音楽監督をしていた時期です。聴き比べを全然していないので分かりませんが、楽曲の狙いである情景描写を思いっきりカメラマンのように演奏しているような気がします。

 上がったり下がったり、忙しい曲ですが、結構、耳に残るメロディーが多いです。この2作品から、流行歌が10曲くらいできそうですよ。ロックというよりポップス的な色合いです。

 しかし、レスピーギはムッソリーニに協力したとして、これら作品までが敬遠されたようで、今でもあまり演奏される機会がないそうです。それはもったいないですね。

Respighi : Pini di Roma, Feste Romane / Lorin Maazel, The Cleveland Orchestra (1977)