$あれも聴きたいこれも聴きたい-Michael Rother 3 素晴らしい青空に飛行機雲。青空というものはなんて気分を晴れやかにしてくれるんでしょう。このアルバムから聞こえてくる音は、もうこのジャケットそのまんまです。人生も黄昏に差し掛かってきているので、一層のこと音が心に染みてきます。

 このアルバムはミヒャエル・ローターの三枚目のソロ・アルバムです。発表当時は日本盤の発売がなかったのはもちろんのこと、輸入盤で見かけることもきわめて稀だったですから、週末の恒例行事としていた輸入盤屋さん巡回の途中で見つけた時には狂喜乱舞したものです。

 しかも当時はドイツ盤って高かったんですよね。プレミア付きのものは1万円くらいしていました。これはプレミア付きではありませんでしたが、それでも3000円はしました。痛かったですが、迷わず買いました。その頃、ドイツの音楽にはまっていまして、それも特にこの辺が気になっていたのです。

 ラジオから流れてくるわけでもなく、ましてやネットなどない時代ですから、レコードを手に入れるしか聴くこともできませんでした。レコードを貸し借りする友人はいましたが、ジャーマン系はいませんでした。

 しかも、ローターのソロは三作目ですが、私が当時入手したのはこれが最初でした。そんなわけですから、買って帰って初めて針を下す時の緊張感たるや凄いものがありました。そして出てきたへたれな音。何だか肩の力が抜けて笑ってしまいましたが、以降、しばらくはこればかり聴いていました。じわじわ来るんですよね。

 私の中では、同じくノイ!崩れのラ・デュッセルドルフの「ヴィヴァ」と対になっていて、とにかく大フェイバリット・アルバムです。どちらも、LPからCD、そして紙ジャケCDと3代目になります。

 この作品はこれまでのソロ作品と基本は同じです。構成もヤキ・リーベツァイトのドラム、ローターのギターとエレクトロニクス、コニー・プランクの音響制作と同じ。しかし、今度は全曲が同じタイトル「猫の為の音楽」に番号をつけた形になりました。同じメロディーが繰り返し出てきますし、全体で統一感のある仕上がりになっています。

 そんなところがいいですね。ギターの音色もゆるゆるとしていますし、抜けるような青空のゆったりした優しいサイドが感じられます。同じ青空でも疾走する爽快感は「ヴィヴァ」の方。それを思うと、ノイ!は本当にいいコンビだったんですね。

 ローターさんのインタビューは結構ネット上で見つかるのですが、どれもこれもインタビュアーがクラフトワークやノイ!、ハルモニアのこと、さらには亡くなってしまった盟友クラウス・ディンガーやコニー・プランクのことばかり聴いています。ローターさんはいい人ですから誠実に答えています。

 それで、結果的にソロ作品に関する言及は極めて少なく、当時も今もあまりこのアルバムにまつわる逸話などは分かりません。ただ、結構売れたらしいです。

 まあ、そんな情報はなくてもいいですか。私にとって、このジャケットを見ながらぼーっと音楽を聴いているのは至福のひと時ですから。クラウトロックの傑作の一つだと思います。

Katzenmusik / Michael Rother (1979)