$あれも聴きたいこれも聴きたい-Myndsnare ご紹介するグループはインドのエクストリーム・メタル・バンドです。

 ポピュラー音楽は国によって違いがあるもので、民族固有のグルーブが音楽に出てきます。そんな中で、ヘビメタはユニバーサルで国境がない音楽だと言えると思います。確固たる様式がある世界で、民族や国の伝統なるものを捨象してしまう魅力があるのでしょう。パンクもそうかもしれません。

 実際、一般にロックが英米に独占されているのに対して、ヘビメタはスウェーデンやノルウェーなどの北欧勢や中南米勢などがタメをはっていますし、わが国にもラウドネスがいました。

 インドにも実は確固としたメタル・シーンがあるんです。メタル界の雄アイアン・メイデンがバンガロールでコンサートをやって5万人を動員したといいます。メタル・フェスティバルも毎年開催されていますし、メタル中心のインディーズ・レーベルもあります。地域的には、ムンバイ、バンガロールといった大都市、それに東北部のシロンがヘビメタのメッカとなっています。

 マインドスネアはそんなインディーズ・レーベルの一つ、デーモン・スティーラー・レコードからデビューしたバンガロールのメタル・バンドです。どうですか、このジャケット。まんまヘビメタの様式美の世界です。

 おまけにメンバーはバイク乗りだということです。ブックレットにはインドのバイク・メーカーであるロイヤル・エンフィールドに感謝が捧げられています。私もバイク乗りの端くれとして、彼らを応援したいと思います。バイク乗りに悪い人はいませんから。

 とにかく典型的なヘビメタです。メンバーはボーカルとギターのKP、ドラムのヤスミン・クレア、ベースのサンデシュ・ナガラジュの三人組です。なんとドラムのヤスミン、女性です。すげぇー、ですよね。あの保守的なインドで、ヘビメタのドラムが女性。これは凄いことですよ。

 ヘビメタはアイアン・メイデンなどのNWBHM(ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘビー・メタル)を元祖とし、その後、ハードコア・パンクと合体したスラッシュ・メタルや、その派生となるデス・メタルなど、さまざまに分類されますが、マインドスネアは、どちらかというとデス・メタル系です。高速ドラムに乗せて、おどろおどろしくボーカルがシャウトし続け、ギターもとにかく弾きまくり。メタルの人はやはり楽器がうまいです。

 いくら様式美の世界とはいえ、インド的な民族要素を交える余地はあると思うわけですが、彼らにはその気は全くなさそうです。その潔さは買いたいと思います。王道メタルで真向勝負。私はメタル道には造詣が深くないので、識者の評価を待ちたいところですが、一言感想を言わせて頂くと、ちょっとキレが悪いかな。ボーカルも弱いし、素人っぽいんですよね。

 しかし、そんな文句を言うよりも、このさわやかな若者たちの音楽を素直に愛でましょう。なかなか聴きがいのあるハイ・エナジーな音楽です。若さ爆発、インドの若者たちの雄たけびを聴け!

 ところでインドのインディーズ専門店のオーナーが、「結構メタル系は日本からも注文が入るんだ」と語っていました。メタルは国境を越えた連帯が進んでいるんですね。

Conditioned : Human / Myndsnare (2008)