あれも聴きたいこれも聴きたい-佐渡裕 ジャケットがいいですね。パリの紳士を気取る佐渡裕。決まり過ぎると嫌味なところですが、少しお相撲さんが入った佐渡裕がちょっと硬い表情で写っている。ふっと力の抜けるとても好感のもてる絵柄です。背景は何だかよく分かりませんね。この緑がとてもいい味を出していますが、いろいろと疑問がわき出る場所の選定です。

 クラシックの旅も順調にやってまいりました。ロックを中心に聴いてきた私には、何もかも新鮮に映ります。結構わくわくしています。

 今回の面白がりポイントは佐渡裕さんです。お手軽にウィキペディアなんぞで調べてみますと、面白いエピソードが満載な人なんですね。クラシック・ファンの方には常識なのかもしれませんが、私には大そう新鮮で面白いです。大乃国はスイーツが大好き、という話のように心に響きます。

 ゲーム好きというところや、初めて買ったレコードが笑福亭仁鶴だとか、いろいろ面白いのですが、やはり一番驚いたのは指揮の最中に指揮棒を折ってしまうというくだりです。そんなことがあるんですね。飛ばしてしまうというのは分かりますが、折れますかね。指揮ぶりを見てみたいと思いました。

 間話除繁、この作品はエリック・サティの管弦楽曲集です。演奏は佐渡裕指揮のコンセール・ラムルー管弦楽団。1881年結成の「パリに現存するオーケストラの中では最も長い伝統を誇る団体」だとライナー・ノーツに書かれています。

 大きな佐渡さんの体からは想像できない、とても繊細で優美でゆったりとした音ですね。しかし、だだっ広い混沌としたパリの都会の空気も色濃く漂ってきます。心が豊かになる音ですね。

 実は、私が最初に買ったサティのレコードは「パラード」でした。当時はクラシックはほとんど聴いていませんでしたが、何となくサティがブームになったので買ってみたんです。普通はピアノ曲を買いますよね。しかし、「パラード」は、ディアギレフのバレエ団のために、ピカソが衣装と舞台装置を、ジャン・コクトーが台本を書いたという能書きに惹かれたんですね。

 あまり聴かなかったように記憶しているんですが、改めて聴いてみてびっくり。結構覚えているものですね。特に「中国人の手品師」の印象的なメロディーなどは頭にこびりついていました。

 「パラード」は、ピストルやサイレン、タイプライターなども使われる派手な展開が一つの特徴ですが、この佐渡盤では、特にピストルの音がけたたましい。音量に注意しないと隣の家から警察に通報されそうです。

 他には、かの有名な「ジムノペディ」や「グノシェンヌ」、「ジュ・トゥ・ヴ」、「家具の音楽」などが含まれていますし、「風変わりな美女」や「エンパイヤ劇場のプリマドンナ」だとか「3つの小さなデコレーションケーキ」、「踊る操り人形」、「メデューズの罠のための7つの小さな舞曲」など珍しいと言われる選曲となっています。

 全体に、とても現代的というのでしょうか、今の作曲家たちが映画や舞台のために作っている音楽と似通ったところがあります。大げさな作品ではなくて、とても自由な作風です。それに四の五の哲学を語らないから、とにかく楽しい。

 それに一曲一曲が短い。佐渡さんのキャラクターもあいまって、ポップス的な楽しみ方ができます。展開が速いし、少しゲームのサントラ感覚もあるかなと思いました。これは本当に楽しいアルバムですね。

ジムノペディ~サティ作品集 / 佐渡裕指揮 コンセール・ラムルー管弦楽団 (2000)

見つからないので、楽曲優先で。佐渡裕の方が好きです。