あれも聴きたいこれも聴きたい-La Dusseldorf 2 ミレニアム問題というものがありました。一言で言えば、コンピューター内の年月日データが西暦の下二けたと月日で構成されていたのが大半だったので、2000年になると動作に不具合が生じるという問題です。コンピューターのメモリや記憶装置が貧弱だったことが直接の原因ですが、2000年を迎える日が来ることが信じられていなかったことにすべては帰着しそうです。

 70年代、いや80年代に入っても、まだまだ2000年が来るという事態は現実味に欠けていました。ちょうどうまい具合にノストラダムスは1999年に世界が滅びると予言していましたしね。マヤ暦の2012年滅亡説がノストラダムスほどは流布していないのは、単純に年数の問題でしょう。

 そんな時代背景で聴いてこそ、このアルバムのB面全部を占めている「チャチャ2000」の真価が分かるというものです。イギリスではパンクスが「ノー・フューチャー」と叫び、アメリカでも明日のことなんて知らないとばかりディスコでサタデー・ナイトにフィーバーしていた時期です。

 そこへ、「巨大な可能性」をもった「愛の未来」がやってくるので、「私と一緒に未来に向かって踊って行こう」、「ちゃちゃ2000年」と、まああっけらかんとまぶしいくらいの大肯定ソングを彼らはぶつけてきたわけです。

 彼らのコンサートでは、やはりこの「チャチャ2000」がハイライトで、時には1時間半に及ぶ演奏を繰り広げたということです。デュッセルドルフ特有のアパッチ・ビートを背景に、適当なシンセの電子音やピアノの音が響き、これまたいい加減なボーカルが躍ります。聴けば聴くほどはまります。人力トランスの傑作と言っていいでしょう。

 彼らのビートはいろいろな呼び方がありますが、この音を聴いてしまえば、「ハッピー・ビート」という呼称が一番しっくりきます。そう言えば、デヴィッド・ボウイはデュッセルドルフの音楽を「80年代のサウンドトラックだ」とまで言っています。

 このアルバムは、ラ・デュッセルドルフの2枚目のアルバムにして最高傑作だと言われています。初めて音の魔術師コニー・プランクの手を離れて、完全セルフ・プロデュース作品になっています。そのせいでしょうが、音が随分シンプルです。また、1枚目にはまだ残っていたノイの片割れミヒャエル・ローターの持っていた叙情的な側面がそぎ落とされてきています。

 要するに彼らの真価が発揮された最初のアルバムだと言うことでしょう。A面は小曲が並んでいますが、どれも明るくて天然です。聴く人によっては、やる気がない、適当、いい加減、だらしないなどという言葉を並べることでしょう。かっちりとした構成の曲などなく、ハッピー・ビートさえあれば、後は自由だ!ということでしょう。

 ジャケットもノイ!時代に戻ったかのようなシンプルかつポップな傑作ですし、裏ジャケットはなぜかトーマス・ディンガーとラクダのどアップ。肩の力が抜けてるんですよね。リーダーたるクラウス・ディンガーはこのアルバムではちゃんとパーカッションもやっていますし、シンセも操っているのですが、なぜかシンセは変名でクレジットしています。何の意味があるのか、全く分かりません。こんなところも天然なんですね。

 ちょっと記憶が曖昧なのですが、このアルバムは日本盤でも発売されたはずです。前作は幻度が高かったので、入手できませんでしたが、こちらはほぼリアル・タイムで購入して、何度も何度も何度も何度も聴きました。これは大傑作です。

Viva / La Düsseldorf (1978)