あれも聴きたいこれも聴きたい-La Dusseldorf ノイ!の二人が袂を分かったのは、もちろん目指す音楽の方向にずれが出てきたということなのでしょうけれども、ミヒャエル・ローターが都会が嫌になって田舎志向を強めたことも大きな要因となっていました。骨の髄まで都会なクラウス・ディンガーと相容れなくなったんですね。田舎育ちの都市生活者の私としては、どちらにも軍配を上げられない話です。

 ラ・デュッセルドルフは、都会派クラウス・ディンガーがノイ!解散後に結成したバンドです。バンド名がもうそのものずばりです。デュッセルドルフには行ったことがありませんが、世界地理ではとても有名な町です。日本人も多いようですが、人口60万人くらいと、大都会と言うには小さい。インドだと小都市です。

 しかし、デュッセルドルフにはとても都会的なイメージがあります。ネアンデルタールはデュッセルドルフ郊外ですから、長い長い歴史の賜物かもしれませんね。

 それはさておき、都市の名前を冠したバンドを始めたクラウスさんは、ここではドラムを叩いているとはクレジットされていません。ギターとボーカルに専念しています。彼の編み出したアパッチ・ビートは、ここでは弟のトーマスともう一人のメンバー、ハンス・ランペが叩いているようです。

 一曲目の「デュッセルドルフ」から、そのビートがさく裂していますが、やはりノイ!の時とは少し違います。同じようなビートなのですが、スピードも速いし、高めの音になっています。若い。監修お兄ちゃんで、弟が演奏しているというビートです。

 そんなビートに乗せて、クラウスが自由気ままにギターを弾いて歌を歌っています。ミニマルなキーボードも入って、パンクですよ、パンク。13分に及ぶ名刺代わりの一曲です。

 ところが二曲目に「ラ・デュッセルドルフ」という本当に名刺となる曲が出てきます。こちらはより短く、さらにパンクな曲です。冒頭に引っ張ってきているのは、おそらくサッカー場の観衆の声でしょう。一曲目は空港のアナウンスだと思います。

 このあたりは、彼らを代表するサウンドで、「コズミック・サーフ・パンク・サウンド」と形容されます。言い得て妙といいますか、そのまんまといいますか。軽やかな能天気サウンドです。

 私が一番好きなのは、実は3曲目の「シルバー・クラウド」です。ゆったりめのアパッチ・ビートとリズム・ギターにのせて、キーボードによるメロディーがかぶさるところはとても気持ちがいいものです。彼らのビートは突っ走るばかりではないんです。

 そして最後は「タイム」という曲で締めくくります。この曲もゆるりとしたアパッチ・ビートで、淡い処理をしたボーカルがしっとりと歌います。そして若い二人が紡ぐビートはここでもやはり力強いです。

 全部で30分強と収録時間の短いアルバムですが、まずは一発デビュー盤を出すぞ、という意気込みが感じられますし、とてもよくまとまった秀作だと思います。

 しかし、このアルバム、発売当時はほとんど目にしたことのない幻のアルバムでした。見かけても値段が高くてねえ。私がこれを入手したのはCD化後のことでした。

La Düsseldorf / La Düsseldorf (1976)