あれも聴きたいこれも聴きたい-Deep Purple
 黄金時代と言われる第二期ディープ・パープルの絶頂を記録したライヴ・アルバム、その名も「ライヴ・イン・ジャパン」です。当初は日本のファン向けに日本でのみ発売されたのですが、あまりの人気ぶりに「メイド・イン・ジャパン」として全世界に発信されました。

 ジャケット内側には1982年8月17日に日本武道館で収録されたと記載されていますし、オリジナルのジャケットは武道館のアリーナをステージ側から写した出色の写真でしたから、ビートルズで名をはせたライヴ会場としての日本武道館は再び有名になりました。

 この写真は動物写真でも有名な内藤忠行氏です。素晴らしい写真です。この写真をみると、結構な数の観客が着席していることに懐かしさを感じます。いつの頃からかコンサートは立ってみるものになってしまい、歳をとると足が遠のいてしまいますね。

 本作品は当時のライヴ・アルバムとしては格段に音が良くて、ライヴ・アルバムの新時代を築いたとも言われます。その意味では、ディープ・パープルの傑作であると同時に、ロックのライヴ・アルバムの傑作であるとされます。実際、見事な音のバランスです。

 紙ジャケのライナーノーツにて、Burrn!の酒井康編集長は、「2度とスタジオ・テイクを聴く気が起きないほど、そのテンションは高い」と書いています。私もこのアルバムを聴いてしまったので、いつまでも「マシン・ヘッド」などのスタジオ作に違和感がぬぐえません。

 それほど演奏もサウンドも素晴らしい。収録曲は過去3作のスタジオ・アルバムからで、いずれもスタジオ作品よりも長尺になっています。とりわけ、ジョン・ロードとリッチー・ブラックモアによるソロ演奏は各楽曲にしっかりと盛り込まれており、堪能させてくれます。

 ただし、酒井編集長は「その後、本作を超えるライヴ・アルバムを僕は聴いたことがない」と手放しで絶賛されているのですが、同時に、本作品を「全部一度に聴いたことはない」と白状しています。思わず笑ってしまいますが、実は私もこの気分はよく分かります。

 今ではCD一枚に収まってはいますが、LP二枚組の本作品はどうしても長いと感じてしまいます。熱狂の渦の中で繰り広げられる演奏は素晴らしいのですが、長尺のドラム・ソロがあったり、ロードによるホルストの「惑星」がでてきたりと冗長に感じないといえば嘘になります。

 一方で、本作品の白眉である「ハイウェイ・スター」と「スモーク・オン・ザ・ウォーター」は本当に素晴らしく、振り返ってみるとアルバム全体がこの出来であったかのように錯覚してしまいます。この2曲だけでも歴史的名盤の価値があると思います。

 なお、エレキ・ギターを手にしたすべてのキッズが一度は弾いてみる「スモーク・オン・ザ・ウォーター」ですが、本作品では観客の民謡調の手拍子が合わなかったからか、イントロをやり直しています。日本でのライヴならではの微笑ましい光景です。余談でした。

 本作品は二枚組ながら全米チャートでは6位とパープル史上最高位を記録しています。「メイド・イン・ジャパン」と改題されて、ジャケットまで代わってしまったことは残念ですが、ディープ・パープルの一つの絶頂が日本で目撃されたことは記憶にとどめておきたいものです。

Made In Japan / Deep Purple (1972 Purple)

*2012年5月12日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Highway Star
02. Child In Time
03. Smoke On The Water
04. The Mule
05. Strange Kind Of Woman
06. Lazy
07. Space Truckin'

Personnel:
Ian Gillan : vocal
Jon Lord : organ, piano
Roger Glover : bass
Ritchie Blackmore : guitar
Ian Paice : drums