あれも聴きたいこれも聴きたい-Far East Family Band 地球は実は中身が空洞になっていて、そこには高度な文明が栄えているということはご存知でしょうか。宇宙から見ると北極と南極には穴がぽっかりと開いています。空洞には真ん中に太陽があり、光に満ちています。その光が洩れてきたものがオーロラです。ちなみに空飛ぶ円盤は地底人が飛ばしています。

 この話、私くらいの年代の人は結構誰でも知っています。別に私が特殊だというわけではありませんよ。「ムー」の愛読者だったわけでもありません。情報源は少年マガジンや少年サンデーなどの漫画週刊誌です。

 今では全くそんなことはなくなりましたが、60年代から70年代の漫画週刊誌には、必ず空想科学などの特集ページがありました。ちょっと怪しい科学が今からは考えられないくらい少年たちの心をとらえていたんです。地球空洞説もその一つ、私の脳裏に深く刻まれていまして、私の人生を豊かにしてくれて来たんでしょう。

 この作品はそんな地球空洞説に真っ向から挑んだコンセプト・アルバムになっています。ファー・イースト・ファミリー・バンドのデビュー・アルバムです。

 あまり有名でないバンドですから、皆さんご存知ないかもしれませんが、このバンドにはあの喜多郎が在籍していました。そうです。シルクロードで有名なグラミー賞までとったあの喜多郎です。このアルバムにも本名の高橋正則で参加して、シンセをあやつっています。また、リーダーの宮下文夫は今やミュージック・セラピストの第一人者として活躍しているということです。どうです。かなり重要なバンドだということが分かりますね。

 このブログの流れで言いますと、ピンク・フロイドつながりです。彼らは、「日本からのフロイドへの回答」と呼ばれたバンドです。典型的なシンセ音のシンセサイザーを多用する彼らの宇宙を感じさせるサウンドは、70年代プログレッシブ・ロックの日本代表です。エレキ・ギターも活躍しているところが、特にピンク・フロイドを想起させた所以でしょう。

 私はリアルタイムでは全然知りませんでしたが、このアルバムは結構売れたようです。それにサウンドがサウンドですから、比較的早く欧米へライブ・ツアーに出かけ、日本エキゾなサウンドが人気を博し、高い評価を得ます。そうして、海外でシンセの第一人者クラウス・シュルツェを迎えて第二作目を制作してしまいます。

 当時は全くのロック後進国だった日本ですから、欧米で高い評価を得たことは大ニュースとなってもおかしくなかったはずですが、メディアに嫉妬もあったんでしょうか、私の耳に届くには至りませんでした。なんででしょう。

 余談ながら、この当時の日本のロック・シーンは、ほとんどまともに総括されていませんでしたが、もはやロック研究界の第一人者ともいえるジュリアン・コープがやってくれました。頭が下がります。がんばれ、日本人。

 このアルバムですが、フロイドばりのゆったりした大らかなうねりを持ったリズムが全編を貫きます。こういうリズムを緊張感を持続しながら味わい深くならすのは難しいなあと感じました。彼らも頑張っていますが、フロイドはやっぱり凄いんだなあと思いました。

 面白いのはボーカルです。当時のカレッジ・フォークを思わせます。もっと言えばダーク・ダックスやデューク・エイセスなどのコーラス・グループ。端正な歌メロがその所以ではないかと思います。

 シンセサイザーのスペーシーなサウンドは後のニュー・エイジを思わせたりもしますし、一方でギターはロックしているというなかなか面白いバンドでした。

 ビデオは時代を感じさせますが、カッコいいですね。

"The Cave" Down To The Earth / Far East Family Band (1975)