あれも聴きたいこれも聴きたい-The Sound Of Siam 最近手に入れたCDですが、見事にはまりました。魅惑のグルーヴが頭の中をぐりんぐりん回っています。いやあ、ぬかりました。タイにこんなに豊かな大衆音楽があったとは。目から鱗です。

 タイには何度か行きましたが、バンコクとプーケットしか行ってないものですから、あまりタイのことを知っているとも言えません。ただ、タイ人は日本人と双璧をなす英語下手ですし、人となりもなんとなく日本的ですから、親近感を覚えますね。それに知り合ったタイ人はみんないい人でした。さすがは微笑みの国です。

 さて、このCDは、1970年前後10年間のタイの歌謡シーンをコンパイルしたアルバムです。発売したのはサウンドウェイという最近活躍中の世界のレア・グルーヴを発掘しているイギリスのレーベルです。いい仕事してます。

 タイには古典音楽やレーという宗教音楽がありますが、大衆音楽は、ルーク・クルン(町の音楽)とルーク・トゥン(田舎の音楽)に分けられるそうです。この作品はルーク・トゥンをまとめたものです。

 ルーク・トゥンはタイの古典音楽から生まれた大衆歌謡で、西洋音楽の影響を受けているもののルーク・クルンに比べるとよりタイ独特の感じが強いようです。そうして、タイ東北部のイサーンで生まれた音楽がモーラムで、日本ではイサーン歌謡とも呼ばれるようです。この言葉づかいだとモーラムはルーク・トゥンの一種だと考えてもよさそうです。

 どんな音楽かと言うと、なんでもエチオピアのジャズに似ているそうです。どうです。分かりましたか?そんなことを言われてもヘレモコシはサネクラシにそっくりだと言われているようなもんですね。私には全く判断不能です。

 ここで聴かれる音楽は、ボーカルを中心とした歌謡曲です。男声も女声もありますし、掛け合いもあります。背景の演奏はとてもシンプルです。そして、中毒性のシンプルなベース・ライン、魔術的なピアノやギターのリフに、タイ特有の楽器ピン(ギター)、ケーン(笙のような楽器)、ソー(胡弓のような楽器)の音色が素晴らしい。

 タイにレコードをプレスする工場ができたのは60年代も半ばだったようで、それまでは日本やインドでプレスしていたそうです。日本プレス盤では、「リンゴ追分」を始め、さまざまな日本の楽曲もそのままカバーされたりしたようです。そんなことからも日本の歌謡曲と相性がいい音楽です。それに、インドの映画音楽のような曲もあります。

 ローリング・ストーンズの中でも最も有名な「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」のリフをそのまま使った曲もありますし、ミステリアスなピアノのリフを含んだ楽曲(2番目のビデオをご覧ください)や、重めのファンク、怪しげなB級ジャズをバックに「愛してるよ~」と叫ぶ曲もあります。

 ちょっと間が抜けた感じもあり、一言で言うととても不思議な味わいです。はまりますね。中毒度は高いです。

 ネットでいろいろと調べていますと、タイ音楽を紹介していらっしゃる日本の方もいらっしゃるんですね。私はインド音楽を紹介するブログを書いていた時期があるのですが、読者は友達しかいませんでした。タイの方は違うようですね。日本にもファンがいるようです。全く知らなかった。世界は広い。

The Sound Of Siam Leftfield Luk Thung, Jazz & Molam in Thailand 1964-1975 (2010)

タイのエグザイルではなく、スーパースター、ダオ・バンドン