あれも聴きたいこれも聴きたい-Neville Marriner ホルストの「惑星」とエルガーの「威風堂々」をカップリングしたCDです。両方ともにクラシックに造詣の深くない私でもよく知っている超有名曲です。どちらもイギリス人だからということでしょうか、それともヒット狙いでしょうか、レコード会社としては考えどころでしょうね。

 「惑星」は平原綾香の「ジュピター」でさらに有名になりましたが、「威風堂々」も負けてはいません。クック・ドゥーやアートネイチャーのCMから「あたしンち」まで、お茶の間浸透度は「惑星」をしのぐ勢いです。

 何といってもどちらもとても分かりやすい楽曲です。特に一曲一曲が適当な長さですから、お茶の間クラシックにはぴったりです。

 「惑星」は占星術に着想を得たということです。こういう発想はそれほど珍しくなく、日本の誇る「セーラームーン」を思い出す人も多いことでしょう。地球が出てこないところは同じですが、残念ながら「惑星」には月の出番がありません。当たり前ですが。

 セーラームーンと比べてみると、各惑星の性格付けが随分違うことが分かります。一番違うのは、水星と土星でしょう。冷静沈着な亜美ちゃんと明るく陽気な翼のある使者は正反対ですし、癒しの能力を持つ神秘的なほたるちゃんが老年をもたらすものとはどういうことかと思います。これだけみても、占星術にもいろいろな流派があることが分かります。

 さて、このCDは、ネヴィル・マリナー指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏を収めたものです。紙ジャケになったCDは名盤中の名盤が選りすぐられていますから、これも名盤だという一般的な評価が定まっている作品なんでしょう。

 彼の指揮は、指揮者の個性をあまり出さずに、楽曲の持ち味をストレートに表現することを目指しているようです。ということは最大公約数的な解釈なのでしょうから、楽団員もあまり構えずに伸び伸びと演奏できるのでしょうか、ここでの演奏は、躍動感にあふれている上に、とても上品で格調高いと思います。それに何よりきっちりしているという感じがします。

 中では、私などはごくごく一般人ですから、やはりスター・ウォーズのように勇壮な「火星」と、文句なしの美メロ「木星」が好きですね。何の気負いもなく聴けるポピュラー・クラシックです。あと一歩で品が無くなるぎりぎりのところです。

 「威風堂々」は鳴り響くブラスがいいですね。こっちは行進曲ですから、地に足のついた大衆感が強いです。元気に足を揃えて行進した先に、あの懐かしいメロディーが出てくるところはなかなか素晴らしい。あたしンちのお母さんが行進してくるのが見えるようです。ここでは、第1,2,4楽章が収められていますが、超有名な第1楽章のみならず、第4楽章もなじみが深いです。

 貴族社会から大衆社会へ変容するイギリスを象徴するかのような楽曲を、サー・ネヴィル・マリナーが指揮するというところがいいですね。なかなか聴きどころの多い名盤です。

Holst: The Planets, Elgar: Pomp And Circumstance / Neville Marriner Concertgebouworkest (1977)

ところで今日は東日本大震災から一周年。合掌。