![あれも聴きたいこれも聴きたい-Manuel Gottsching](https://stat.ameba.jp/user_images/20120223/22/memeren3/98/e1/j/t02000201_0200020111812377928.jpg?caw=800)
本作品は、先日、取り上げたアシュ・ラ・テンペルことマニュエル・ゲッチングの初めてのちゃんとしたソロ名義の作品です。もともと発表の予定もなく、ゲッチング自身のスタジオで録音された作品でしたが、それを聴いたアシュ・ラ時代の友人であり、ジャーマン・プログレ界の大物クラウス・シュルツが発表することを勧め、自身のレーベルからリリースしたものです。録音から3年が経過していました。
一発録音と言われていますが、一人で制作したということですから、一発では無理でしょう。ただ、ダビングを繰り返して制作されたものではないと思います。曲名は9曲分用意されていますが、切れ目はなくて全部で1曲。昨日のJ・ディラとは違って、こちらは1曲の展開の中でサブ・タイトルをつけてみましたという感じです。
内容はというと、1時間にわたってリズム・マシーンがほぼ同じリズムを刻み続け、そこに様々なパターンのシンセ音が加わり、後半はギター弾きまくりです。全体に大きな波がうねるようなグルーブが醸し出されていて、とてもとても気持ちの良い昇天サウンドが展開されます。
ロック的な要素はないのですが、ギターは情感豊かで、ストリップの定番「哀愁のヨーロッパ」系の官能ギターと言っても過言ではありますまい。ギターの音はアルデンテ。柔らかですが、中に固い芯が残っているような音です。面白いです。
さて、このアルバムは同時代的にはあまり話題になったわけではありません。「単調だった」からと書いている人もいましたが、そうではないと思います。当時のジャーマン・プログレ・シーンにはもっともっと単調なアルバムはいくらでもありました。やはり、こういうリズムが受けなかったということだと思います。
ところが、このリズムの感覚は、80年代後半からテクノ~ハウスのDJ達に再発見されて、人気が高まっていきます。89年にはハウスのチームによってリミックスされ、大ヒットすることになりました。そうして、ゲッチングはテクノの先駆者として不動の地位を手に入れ、現在に至るも一線で活躍しています。
トランスの始祖、快楽主義的音楽の大先輩。同時代を知るものとしては感慨深いものがあります。確かに時代を超えた幻の音の詰まった名盤と言えましょう。
E2-E4 / Manuel Gottsching (1984)