あれも聴きたいこれも聴きたい-Renaissance ルネサーンス!髭男爵はどうしたんでしょう。最近見ませんね。

 ルネッサンスは不思議なグループです。69年にデビューしますが、ほどなく解散します。しかし、メンバーを全く入れ替えて再出発したのがこのアルバムです。普通はリーダーが残って、ほかのメンバーを入れ替えるものですが、このバンドは全員が入れ替わっています。

 最初のルネッサンスは、当時のスーパー・グループ、ヤードバーズのボーカルだったキース・レルフと同じくヤードバーズのドラマーだったジム・マッカーティーを中心に結成されました。アルバム二枚を残して解散しますが、解散直前に参加していたマイケル・ダンフォードという人の働き掛けで全くの新生バンドができたわけです。おそらく曲が残っていたのでもったいないと思ったんでしょうね。

 新メンバーはセッション・ミュージシャンとして定評のある人ばかりだったようですから、曲に合わせて選んだんでしょう。掘り出し物はボーカルのアニー・ハスラムです。オペラ歌手に声楽を学んだという5オクターブの声を持つ女性です。そして、このバンドはそこそこの成功をおさめます。

 オリジナル・ルネッサンスも後にイリュージョンと名を変えて再デビューします。普通だと、名前の使用権を巡って裁判になるところですが、新生ルネッサンス誕生時の経緯でいろいろあったんでしょうね。平和裏に話は進んでいます。珍しいので長々とバンド・ヒストリーを書いてしまいました。

 この作品はロックにしてはクラシックだと評判が高いです。アニーのクリスタル・ヴォイスだけではなく、ジョン・タウトのクラシカルなピアノが大活躍します。曲も一曲が長く、複雑な構成となっています。当時はプログレ時代だったことを思い出しましょう。

 しかし、あくまでロックから見てのクラシックです。昨日のタッシから比べると随分地上に降りた感じがします。ポピュラー・クラシックとでもいうのか、ちょうどロックのエンターテインメントなところとクラシックのポピュラーなところがうまくマッチして、これはこれで素敵です。ブリティッシュ・トラッドの香りもします。

 面白いのは「ラジャ・カーン」というインストの大作で、これは名前の通り、中近東風のリズムとメロディーです。いかにもヨーロッパ的な中東趣味に仕上がっています。ルネッサンスと言えば、中欧や南欧を思い浮かべます。ヨーロッパよりの中東ということで、ちょうどその辺りの雰囲気です。

 このバンドの曲はベース・ラインが生き生きとしているところも魅力です。しかし、なんといってもアニーのボーカルですね。癒されます。

Prologue / Renaissance (1972)