あれも聴きたいこれも聴きたい-Shakatak シャカタクの名前を全く知らない人でも、「ナイト・バーズ」という曲は聴いたことがあるはずです。おそらく日本中にある商店街のアーケードでこの曲をかけたことがないところはないと思います。

 シャカタクはイギリスのグループですが、日本での人気は半端じゃないです。彼らはゴールド・ディスク大賞もとっていますし、懐かしの「男女7人夏物語」や「男女7人秋物語」のサントラにも使われています。その上、日本向けにアルバムを制作する契約を結んでいた時期もありました。

 確かに、ライト・ジャズといいますか、イージー・リスニング的なジャズがはやった頃、あの田中康夫の「なんとなくクリスタル」の頃だったので、受ける素地はできていたのだと思いますが、それにしても彼らの日本での人気はちょっと異常です。興味ある題材だと思います。

 そもそも、彼らはブリティッシュ・ジャズ・ファンクのシーンから登場しました。パンク後の英国ではニュー・ウェーブと呼ばれる一群の音楽が出てきましたが、とにかく何でも目新しいものが求められていました。彼らにとってはジャズもファンクも新しかったということで、ファンクっぽいジャズを演奏する一連のグループに光があたり、コンピレーションが盛んに編まれました。そこで注目されたのがこのシャカタクです。

 ただ、確かにそうなんですが、ちょっとびっくりします。だって彼らは日本のバンドのような印象ですからね。ミュージック・フェアの常連のイメージ。ジャズ・ファンクには違いないのですが、改めて言われるとちょっと驚いてしまいます。

 彼らは日本でだけ受けたわけではなく、「ナイト・バーズ」は英国でもトップ10ヒットとなり、ロング・セラーを記録していますし、ヨーロッパやアメリカでもそこそこの人気を博しています。しかし、やはり日本でしょう。この曲は日本でも大ヒットとなりました。シックに影響を受けたというクールなグルーブの上に、印象深いピアノが流れます。ボーカルは歌というよりも楽器の一種のようです。いい曲ですね。カシオの電子キーボードのデモ音源としても有名になります。

 この曲では、彼らの得意なテクニック「シャカ・ギャップ」が効果的に使われています。「メロディ・ラインを引き立てるために、数秒のあいだ全員が演奏を止めるんだ」というもの。ネーミングがいいです。何でも応用できそうです。シャカをつければいいだけですからね。

 同じシーンから出てきて、英米ではシャカタクと肩を並べたレベル42というバンドがありますが、日本ではシャカタクの足元にも及びません。なんでこんなに日本で受けたのか。それもジャズやフュージョンが好きな人だけではなくて、それこそ一般のおっちゃんおばちゃんにも受けたんです。商店街の定番です。

 やはり丁寧にメロディー・ラインを聴かせる彼らの演奏スタイルが大きかったんでしょう。リズムはファンキーなグルーブですが、メロディーはとても日本的ですから。しかもドライブにぴったり。

 ところで、最近のクラブ・ジャズやスムーズ・ジャズとの関係ではどうなんでしょう。彼らは再評価されてるんでしょうか。大いに売れたのでレアというわけではありませんが、過去の音源再訪で再評価されてもいい気がします。

Night Birds / Shakatak (1982)