あれも聴きたいこれも聴きたい-Soulmate 昨日のテデスキ・トラックス・バンドの余韻が冷めやらないのですが、そこでふと思いついたのがこのソウルメイトです。同系統の音楽なんです。それにおそらくひとつ前に見たライブがこの人たち。ニューデリーでの出来事でした。

 彼らを「インド」というカテゴリーでご紹介するのはちょっと躊躇します。インド音楽のファンの人よりも、普通にブルース・ロックが好きな人にこそ聴いてほしいと思うからです。彼らは、2007年にはメンフィスで行われた国際ブルース・チャレンジにインドを代表して参加し、見事に準決勝まで進んだ本格的ブルース・バンドなんです。

 彼らの出身はシロンというインド北東州の小さな州メガラヤの州都です。行ったことがないのが大変残念ですが、インドの特異スポットだそうです。普通のタクシーの運転手がメガデスを聴きながら町を流しているというヘビー・メタルな都市であるとともに、毎年、ボブ・ディランの誕生日にディラン・フェスティバルが開かれる町でもあります。ちなみに近くのミゾラム州にはユダヤ教の集落があります。

 彼らはそんなシロンの新たな音楽伝説です。このソウルメイトは、ギタリストであり、シンガー・ソング・ライターでもあるルディー・ワランと女性シンガー、ティップスことティプリティ・カルバンガンの二人組です。見事なまでのブルース・バンドです。

 ルディーは「自分たちがブルースを選んだのではない。ブルースが私たちを選んだんだ」と語っています。そんなことを言う資格は十分にあると思います。子供の頃からこういう音楽に親しんでいないと、こんな音楽は出てこないだろうと思います。普通にインドの町に育ってもこうはいかないでしょう。

 ルディは父親がミュージシャンで、幼少のみぎりから、ウクレレやギターを学びました。ティップスは教会のゴスペルがキャリアのスタートだといいます。ソウルメイトはそんな二人によって2003年に結成されています。以降、北東州をはじめ、インド各地で演奏を重ね、着実に人気を獲得していきました。

 影響を受けたミュージシャンを問われれば、アルバート・キング、B.B.キング、ピーター・グリーン、オーティス・ラッシュ、エラ・フィッツジェラルド、ジョン・リー・フッカーなど錚々たる渋い名前が並びます。音を聴くと納得できます。

 この作品は彼らの二枚目のアルバムです。ルディーのギターは時にごりごりと圧してくるものの、基本は実に流麗なブルース・ギターです。2曲でボーカルをとっていますが、これも結構渋い。ティップスはしなやかで艶のある綺麗な声を楽しげに響かせます。ゴスペルらしい迫力もあります。

 楽曲も魅力にあふれています。曲調はジャジーなブルースというところ、本当に本格的なブルースなんです。曲の中では「シー・イズ」がお勧め。クラプトンのようです。全体を通して、インドということで割り引かなくても十分に素敵なアルバムです。

 最初に申し上げた通り、私は、ニュー・デリーのライブハウスで行われたライブも見ました。予想していた通り、素晴らしいライブでしたよ。やはり彼らはライブ・バンドです。小柄なティップスのどこにそんな力があるのかと思うくらいのド迫力。ルディーもばりばりギターを弾きまくっていて、客席は大いに盛り上がりました。一緒に連れていった友人たちにも大好評で、大そう鼻が高かったことを覚えています。

 ぜひ来日してほしい。

Moving On / Soulmate (2009)