あれも聴きたいこれも聴きたい-Edgar Winter 3
 全くもって妙ちきりんなジャケットです。ここではエドガー・ウィンターが仮面をかぶっています。それに手が変です。原始の叫びが聞こえてくるようです。恐ろしい。裏ジャケの写真はいつものナルシストぶりを発揮しているので、この仮面に意味があるのでしょう。

 さて、このアルバムはエドガー・ウィンターのソロ作品となります。彼の場合はバンドも彼の名前を冠しているので、どれがソロでどれがバンドか分かりにくいですが、これはソロです。ただし、演奏しているのは、ほとんどバンド・メンバーですからややこしい。

 きっと、これまでの成功に気をよくしたものの、自分の名前が大々的にフィーチャーされたバンド名にもかかわらず活躍の場が少ない、と寂しそうなエドガーのご機嫌をとるべく制作されたと勝手に推測してみました。もう一人の大物リックのソロも同時期に発表ですし。

 いずれにせよ、ソロということで、いろんなことをやってみたという感じのするアルバムです。発売当時「あまりにもいろいろな要素が入りすぎていてわかりにくい」と評価されたそうです。ジャンルを絞り込めないこのブログのようです。

 しかし、確かにいろいろな要素が入っているものの、分かりにくいということはないでしょう。製作者の意図は「いろいろなことをする」ということだったでしょうから。そこはやはりソロだということが大きい。自分一人の責任ですから冒険もしやすい。

 この作品は全米69位と微妙なヒットを記録してはいるものの、あまり日の当たることがありませんでした。しかし、過去の埋もれた音源を探るレア・グルーブ運動のソウル版たるフリー・ソウルで脚光を浴びることなります。AORを先取りした楽曲が評価されたもののようです。

 エドガー・ウィンター・グループはポップなハード・ロックが大きな魅力でしたが、それはどちらかと言えば、ダン・ハートマンやリック・デリンジャーの持ち味のようで、エドガー自身はソウルやブルースの方向を向いた音楽性を持っています。

 グループ名義の前作でも彼が単独で作った曲はそんな感じでした。したがって、このソロ作ではそっち方面の魅力が全開です。それにブルース一筋の偉大な兄ジョニー・ウィンターも参加してその足跡を残していますから、そっち方面に大きくならざるを得ません。

 典型的な曲は「ハロー・メロウ・フィーリング」です。ソウルやジャズのセンスが強いいわゆるAORな楽曲です。その他の楽曲は、カフェでかかっていてもおかしくない甘いポップな曲もあれば、お兄さんのスライド・ギターをフィーチャーしたブルージーな曲もあります。

 さらにダン・ハートマンが歯でギターを弾いたというジミヘンな曲や、テレビの主題歌のような曲、プログレ風味な曲などもそろっています。サックス吹きまくりですし、バンドの作品とは受ける印象が大きく異なります。とにかく何でもやってみた。

 そういうわけで、今聴くとなかなかに隠れた名盤だなということが分かります。AORなる言葉がまだ人口に膾炙する前の作品ですから、それを先取りしたということにもなります。やはりエドガー・ウィンターは只者ではありません。

Rewritten on 2018/6/24

Jasmine Nightdreams / Edgar Winter (1975 Blue Sky)