あれも聴きたいこれも聴きたい-AliceCooper08 悪夢へようこそ!この上なくかっこいいタイトルです。定番の重厚さを感じますね。

 アリス・クーパーの初めてのソロ・アルバムにして代表作です。つい去年、続編が出たことでもその代表作っぷりが分かろうというものです。バンドは前作をもって解散します。アリス・クーパーはバンド・メンバーとの名義をめぐる争いに備えて、戸籍名をアリス・クーパーに変えてしまいます。芸が細かい。

 この作品は、スティーブンという名前の子どもが見た夢を題材にしたコンセプト・アルバムです。「ザ・ナイトメア」というテレビ番組も制作され、グラミー賞の長編ビデオ部門にノミネートされました。さらにツアーの模様は映画にもなり、ヒットこそしませんでしたが、カルト映画となりました。

 戦後クラシック・ホラー映画の三大スターの一人、「ハエ男の恐怖」のヴィンセント・プライスがナレーションで参加しています。彼はのちにマイケル・ジャクソンの「スリラー」でも語りを務めました。

 さらに、昨年、続編の発表を記念してユニバーサル・スタジオで同名のアトラクションまで誕生しています。

 どうです、この徹底ぶり。もはやロックの枠を超えたテーマ・パーク級のエンターテインメントですね。

 肝心の音の方ですが、アリスと一心同体だったプロデューサーのボブ・エズリンが帰ってきて、徹底的にドラマチックな作りになりました。バックのバンドは、ルー・リードのバックを務めていたバンドをエズリンが引っ張ってきました。このバンドは、ディック・ワグナーとスティーブ・ハンターのツイン・リード・ギターが冴えわたっていましたね。ここでも全開です。

 特にギターのディック・ワグナーは全面的に作曲面でも貢献しており、全体にアリス・クーパーの作品ではありながら、バンドの音はむしろルー・リードに近い感じになっています。

 渾身の大作だけあって、楽曲の質は高く、バラードからハード・ロックまでバラエティーに富みながらも全体で一つの作品となっています。テレビ出演も頻繁となり、一皮むけたエンターテナーぶりを見せるようになりました。

 しかし、どうでしょう。私はアリス・クーパーのどうしようもなくチンピラな感じが大好きでした。バンドの方向性として洗練を目指しながらも、ちょっとずつそれていくような感覚と言えばいいのでしょうか。そういうものが薄らいできました。ミュージカルとしては成功でしょうが、「スクールズ・アウト」に代表される突破力が懐かしい気がします。

Welcome To My Nightmare / Alice Cooper (1975)