あれも聴きたいこれも聴きたい-Alicecooper07 今度は段ボールのジャケットです。ご丁寧にシミまでついた段ボールです。中にはブック・カバーが封入されています。毎回毎回凝るものですね。私はこのLPの現物を持っていたので、今回の紙ジャケでの再現には感動いたしました。凄い。

 この作品はアリス・クーパーの7枚目のアルバムです。大成功した前作からわずか9か月の間をおいて発表されました。私が初めて買ったアリスのLPはこれでした。中学校の時なので、擦り切れるほど聴きましたね。何と懐かしい。脳内iPodに全曲収録してあります。

 一般に、大成功した後の最初の作品は難しいものです。このアルバムも例外ではなく、そこそこ売れましたが、前作のように1位を獲得するまではいきませんでした。このアルバムがまた大成功していれば違ったのでしょうが、そうはならなかったことから、歯車が狂っていったようです。

 よりシアトリカルなものを求めるアリス・クーパーと、どんどんエスカレートするステージに嫌気がさしたバンド・メンバーとの間の対立は激しくなり、アリス本人はアル中への道をまっしぐらに進んでいきます。結果的にこの作品がバンドとしてのアリス・クーパーの最終作となりました。まあ、そんな事情を知る由もなく、私はこのアルバムに魅了されておったものです。

 前作に比べますと、明らかにミュージカル的な色彩は薄くなっています。よりタイトなバンド・サウンドになりました。プロデューサーはほとんどバンドのメンバーとなっていたシアトリカルな作品作りに定評があるボブ・エズリンから、のちにエアロスミスなどで有名になるジャック・ダグラスに変わっています。経緯はよく分かりませんが、その影響も大きいと思います。

 前作では大量のドル紙幣に埋もれたバンドの写真を載せていました。今回は、お金をもった船乗りにふんしたバンド・メンバーがヌード・レスリングを見に行って、そこの用心棒に叩き出され、傷だらけの姿で船に戻ってみんなでジャガイモの皮を剥く、というストーリーになっています。前作から続いているとも言えます。この辺の下世話な感じがたまりません。彼らの大きな魅力ですね。

 アリスは、「007死ぬのは奴らだ」の主題歌をポール・マッカートニーが歌ったことに刺激されたのか、次回作となる「黄金の銃を持つ男」のタイトルを持つ曲を収録しています。本気で主題歌を狙っていたようで、ライザ・ミネリまでコーラスに動員しています。思えば前作には007のテーマが顔を出していましたね。しかし、残念ながらルルに負けてしまいました。私も期待していたんですけどね。

 とにかく、これはいいアルバムです。ちんぴら感がたまりません。私は特に「クレイジー・リトル・チャイルド」が大好きでした。これはジャクソンという不良少年の一生を歌った歌で、一曲ミュージカルです。途中のクラリネットが堪らなく好きでしたね。チープな響きが得も言われぬ快感をもたらします。

 ほかにもシングル・ヒットした「嘆きのティーンエイジ'74」とか、ヘビーなロック「夢のニューヨーク」だとか、オルガン全開のやすっぽい「アリスは強心臓」とか名曲ぞろいです。

 ただ、おそらくチャート・ポジションは正しいのでしょうね。客観的に見て、前作の緊張感はありません。それでも私は大好きですが。

Muscle of Love / Alice Cooper (1973)