あれも聴きたいこれも聴きたい-AliceCooper03 お世話になった先輩にお会いして、病気見舞いをされたので、結核になった話を得意になってしていたら、実はその方が癌で余命幾ばくもないということを知り、無神経な自分が情けなくなりました。貧乏自慢とか病気自慢とか、時と場合を考えないとやばいですね。

 ちょっと違いますが、アリス・クーパーのステージはショッキングな仕掛けで評判になったものですから、自慢に似た感じで皆がアリスのステージの話をします。そうするとだんだん尾ひれがついてきて、あることないことが聞こえてきました。その中に、「アリス・クーパーはステージでうんこをした」というのがありました。調子にのって、ザッパは「その上、食べた」という話にもなりました。もちろん、とんでもない嘘っぱちです。ただ、面白いファンの心理状態ではあります。

 前置きが長くなりましたが、アリス・クーパーはこの作品でブレイクします。先行シングルの「エイティーン」が大ヒットして、アリスの名前は一躍知れわたることになります。レーベルもワーナー・ブラザーズになり、メジャー感が高まりました。

 ここからは、結構な人が知っているアリス・クーパーです。私にも違和感はまったくありません。前二作の経験は必要だったのでしょうが、特にデビュー作からは大きく隔たった地平にたっています。もともと演劇性の高い人々ですが、その路線がさらに劇的になる一方で、各楽曲はタイトにまとまって、キャッチーなメロディーが際立つようになりました。

 ボーカルも完成に近づき、サウンドも進化して、すっかりメジャーな音になっています。ツイン・リード・ギターの活躍でハード・ロック色が強まり、70年代エンタメ系アメリカン・ハード・ロックの頂点へと登りつめていく様がよく分かります。下世話さを失わないところが特にポイントが高いです。

 今ではヘビメタの元祖と呼ばれることもあるようですが、それほど楽器が上手ではないですし、ちんぴら感が強いですから、私などにはもの凄く違和感があります。ヘビメタって様式美の世界ですし、嫌な言い方ですが、高尚なところがないといけないと思うんですよね。

 ところで、このジャケットを見てください。小さくて分からないかもしれませんが、真ん中に立っているアリス・クーパーの右の手の指にご注目。アメリカでは、これがペニスを思わせるとして発禁になりました。えーっと思いますよね。そう言えば、アメリカでは、後ろ向きに立っている男性の前に女性がこちら向きにひざまずいて座り、男を見上げている写真のジャケットが発禁になったこともありました。想像力が逞しすぎですよね。お笑い草です。

Love It To Death / Alice Cooper (1971)