あれも聴きたいこれも聴きたい-AliceCooper01 ショック・ロックという言葉をご存知でしょうか。文字通りショックなロックのことです。何がショックかと言うと、蛇が出てきたり、悪魔が出てきたりするところです。アリス・クーパーの音楽を指す言葉として発明されました。

 この言葉は、ショックとロックが韻を踏んでいるので、もっと流行るかと思いましたが、全然流行らずじまいでした。おそらく、その筋ではより派手でお子様向けのキッスがあまりに人気を博したからでしょう。

 ショック・ロックだけにアリス・クーパーのジャケットもショッキングなものが多いです。このデビュー・アルバムも地味にショッキングです。ビールを飲んでいる紳士の後ろにいる女性はスカートをめくっています。色合いを含めて何だか変なジャケットです。

 この作品でアリス・クーパーはデビューしました。しかし、日本ではアナログも含めて長らく発売されていませんでした。なぜ、発売されなかったのか。本国アメリカでも売れてないし、売れそうにないからでしょう。その判断は正しかったと思います。

 彼らは、17世紀の魔女の生まれ変わりのアリス・クーパーをリーダーとするバンドです。デトロイト出身ですが、活動の本拠は西海岸です。「LAで最も悪趣味なバンド」としてアングラな人気を博していた彼らを知ったフランク・ザッパにデビューの機会をもらいました。

 伝説によれば、ザッパ先生は彼らのプロデュースをするつもりだったそうですけれども、途中で興味を失い、当時の右腕イアン・アンダーウッドにプロデュースを委ねたとのことです。マネージャーのハーブ・コーエンも一役買っている模様です。

 しかし、プロダクションのクレジットはバンドに与えられています。イアンにとってはあまり満足のいく仕事ではなかったのかもしれませんし、ザッパ先生の代役として遠慮したのかもしれません。イアンのプロデュース作品も珍しいので、きちんとクレジットがあればよかったのに。

 アリス・クーパーは後に大成功を収めますし、私も成功を収めた後のアリスはよく聴いていたのですが、ザッパの近辺にいた当時の音は初めて聴きました。言われてみないとアリス・クーパーだとはわかりません。

 一言で言えば、何だか将来大化けしそうな予感もしないではないアマチュア・バンド、という感じです。もちろん前半部分は後知恵ですけれども。ハード・ロックだけれどもあまりブルース臭を感じさせない、アマチュアによくありがちな端正な音楽です。

 ただし、各楽曲のイントロとなる曲を配したりして、トータル・アルバムの体をなしていますし、SF的なイメージもあり、後の演劇性の萌芽が見られます。人気と実力よりもスターとしての自意識が先走っているようで、面白がろうと思えばとても面白いです。

 そのあたりはグラム・ロックの先駆者としての意味合いもあると思われます。裏ジャケットにある未来的なコスチュームはグラマラスなものです。ここを単なる悪趣味と言われないような迫力を備えれば、まさにグラム・ロックになったことでしょう。

Updated on 2016/7/9

Pretties For You / Alice Cooper (1969 Straight)