あれも聴きたいこれも聴きたい-YamashitaYosuke 昨日、新宿のピットインで山下洋輔の演奏を聴きました。生で見るのは初めてです。予想通り、迫力のある素晴らしい演奏でした。肘打ちもさく裂していましたが、叙情的なフレーズもあったり、クラシックのような一節も出てきたりしたところが意外でした。

 予習しようと思って、今現在家にある唯一の山下洋輔のCDを聴いてみました。ドバシャカシレチャカした演奏ではないので、あまり予習にはならないなと思っていたのですが、生演奏に接してみると実はちゃんと予習になっていました。意外な一面は意外でもなかったということです。

 この作品は帯によれば、「筒井康隆の小説を題材にした山下洋輔の天才的トータル・プロデュース作」です。豪華ゲスト陣がちょっとずつ参加するという贅沢なアルバムです。筒井康隆が「家」を朗読しています。それに、タモリが天気予報官、兵隊、僧侶として、ハナモゲラしています。タモリのレコード・デビューだということです。

 筒井康隆と言えば、私の大学時代の愛読書でした。スラップスティック系の話が大好きで、文庫本を読み漁っていたものです。筒井康隆、山下洋輔、坂田明、赤塚不二夫、タモリといったところが仲良しでしたが、とてもジャズ的な交友関係に当時はロックしか聴いていなかった私としてはちょっと違うなあと思っていたものでした。

 この作品は、ドシャドシャしたり、ガンガンしたりするのではなく、サウンドスケープと申しますか、ミニマル音楽と言いますか、サントラと言いますか、音響作品と言いますか、そんな感じです。近いところでは、高中正義の「虹伝説」を思い出しました。音が似ているというわけでもなく、全体の感じだけですが。

 それと、おなじみ「エクソシスト」のテーマとなったマイク・オールドフィールドの「チューブラー・ベルズ」です。実際、山下洋輔はチューブラー・ベルズを使っていて、マイクの曲の一節がほぼそのまま奏でられます。

 全体に静かな繰り返しのベース・トラックに乗って、いろんな人々が音を重ねる形です。坂田明のサックスや大貫妙子のボーカル、他にもいろんな楽器が流れますし、効果音もふんだんに用いられていて、音のコラージュのようになっています。しかし、厚く塗り重ねるのではなく、あくまでシンプルです。

 そんな中でタモリのハナモゲラが素晴らしい味を出しています。これを世に出したくて作ったアルバムなのかもしれませんね。

 いずれにしても、山下洋輔に対する見方に修正を迫る作品です。全体に音を積み重ねるセンスは素晴らしく、細部にまで神経が行き届いていて、何度聴いても新しい発見のある作品です。面白い。

家 / 筒井康隆、山下洋輔(1976)

全然関係ありませんが、ここは一つ我慢してください。


タモリの外国語です。