あれも聴きたいこれも聴きたい-GratefulDead16
 グレイトフル・デッドの久しぶりのライヴ・アルバムです。1980年の9月から10月にかけてサンフランシスコとニューヨークにて行われた、バンドの15周年を記念するライヴの模様を収録した作品です。このライヴは1か月にわたりほぼ毎日行われています。

 この時のライヴは前半がアコースティック・セット、後半がエレクトリック・セットで行われています。当初はその形を反映して、アコースティックとエレクトリックの2枚組アルバムとする予定だったそうですが、それではあまりに情けないという声が大きくなりました。

 結局、両方のセットをそれぞれ2枚組で発表することに決まり、まずはアコースティック・セットだけを集めた本作品「レコニング」が発表されました。LPは当然2枚組で、CDは当初1曲削った形で1枚で出されました。その後、無事当該曲は復帰しています。

 手元にある作品はCDにして2枚組となっています。オリジナルのCDに加えて、同じライヴから選ばれた曲と少しばかりスタジオ・リハーサルの模様を収めたボーナス・ディスクが同報されました。LPだと4枚組ですね。当初計画から4倍に膨らみました。

 アコースティック・ライヴですから、デッドの通常のアルバムとは一線を画します。とはいえ、初期の頃のアルバム、「ワーキングマンズ・デッド」や「アメリカン・ビューティー」などはかなりアコースティック要素が強かったので、大変身というわけではありません。

 もともとデッドが誕生したサンフランシスコのパロ・アルトはフォークの女王ジョーン・バエスが高校生活を送った地でした。いわばフォークのメッカとも言える土地柄です。実際、デッドのメンバーでもボブ・ウィアなどはフォークにずいぶん入れ込んでいたそうです。

 ジェリー・ガルシアもブルーグラスのバンドでバンジョーを弾いていたといいますから、こうしたフォーキーなアコースティック・サウンドはデッドの原点であるともいえます。その意味では、アコースティック・セットは原点回帰のライヴということもできます。

 さらにエレクトリック主体のバンドがプラグを抜いてアコースティックにライヴをこなすといえば、MTVアンプラグドです。デッドの本作品はアンプラグドに先立つこと10年、ここでもデッドの先見性が表れています。デッドヘッドの意向も汲み取っていたのでしょう。

 アルバムは「ワーキングマンズ・デッド」収録の「ダイアー・ウルフ」で始まり、「アメリカン・ビューティー」収録の「リップル」で終わるという小憎らしい選曲です。有名曲「チャイナ・ドール」などがあるものの、カバー主体となっているところも渋い。

 アコースティック・ギターとなると、否が応でもかっちりした音になります。エレキギターと違って、だらしない音が出しにくい。フィル・レッシュはエレキ・ベースのようですがこころなしか控えめですし、ドラムもフルセットではない模様で、こちらもおとなしめです。

 だらだらしたところが魅力だと思っている私としては、やや違和感を感じます。格調高いサウンドで、曲の骨格もよく分かって、それなりに楽しいのですが、少しさみしい。ただし、これもデッドの重要な側面です。長い歴史にはこうした作品が必要なのだと思います。

Reckoning / Grateful Dead (1981 Arista)

*2011年12月23日の記事を書き直しました。



Tracks:
(disc one)
01. Dire Wolf
02. The Race Is On
03. Oh Babe It Ain't No Lie
04. It Must Have Been The Roses
05. Dark Hollow
06. China Doll
07. Been All Around This World
08. Monkey And The Engineer
09. Jack-A-Roe
10. Deep Elem Blues
11. Cassidy
12. To Lay Me Down
13. Rosalie McFall
14. On The Road Again
15. Bird Song
16. Ripple
(disc two - bonus)
01. To Lay Me Down (studio rehearsal)
02. Iko Iko
03. Heaven Help The Fool
04. El Paso
05. Sage & Spirit
06. Little Sadie
07. It Must Have Been The Roses
08. Dark Hollow (alternate live version)
09. Jack-A-Roe (alternate live version)
10. Cassidy (alternate live version)
11. China Doll (alternate live version)
12. Monkey And The Engineer (alternate live version)
13. Oh Babe It Ain't No Lie (alternate live version)
14. Ripple (alternate live version)
15. Tom Dooley
16. Deep Elem Blues (alternate live version)

Personnel:
Jerry Garcia
Mickey Hart
Billy Kreutzmann
Phil Lesh
Brent Mydland
Bob Weir