あれも聴きたいこれも聴きたい-DanHartman 何とも妙なジャケットです。何ともいえないセンスですよね。ちょっと違う感じ。彼は同性愛者ですが、時代が時代だけにゲイであることに苦しんだ人です。

 このアルバムはダン・ハートマンの初ソロ・アルバム。今回ウィンター・ファミリーの紙ジャケ再発でCD化されましたが、なんとこれが世界初CD化ということです。ダンといえば「あなたを夢見て」などというミリオン・セラー・ヒットも持っている人なのに、この扱い。不当な気がします。

 エドガー・ウィンター・グループのアルバムはプロデューサーのリック・デリンジャーが「徐々にダンのアルバムになりつつある」と言うほど、彼の曲作り能力とボーカルが前面に出ていました。そんな彼らですが、活動期間は短く、メンバーの不和ではなく、売上の低迷から解散してしまいました。その後、ダンの才能が見込まれて発売されたのがこの作品ということになります。

 キャッチーなメロディーが満載ですし、バラードからソウル、ポップ、ロック、いろんなタイプの曲が並んでいます。ダンの歌声もソウルフルでかっこいい。70年代のきらきらしたロックがさく裂しています。

 しかし、何と言えばいいんでしょうか、一言で言えば地味です。やはり同じ歌でもエドガー・ウィンター・グループでやっていればもっと華があったと思われます。いい曲が並んではいるのですが、今一つ引っかかりがなくて、ポテンシャルはあるのになかなかヒットに結び付かない。

 後に彼の代表作「リライト・マイ・ファイヤー」を英国のボーイズ・グループの王者テイク・ザットがカバーして、大ヒットします。そう、ここに収められた曲をボーイズ・グループが唄えばよいのではないかと思いました。そうしたら大ヒットだったかもしれません。

 そう考えると歌謡曲的ですね。都倉俊一や筒見京平のような感じ。職業作曲家。実際、彼は20年強のキャリアの中で122枚のアルバムに参加し、248曲を書いたと言うではありませんか。日本で活躍できたかもしれません。

 この作品の話題の一つにお父さんの参加があります。アマチュアながら口笛の名手だったお父さんが、一曲で口笛を吹いています。ほのぼのしていいですね。お父さんも嬉しかったことでしょう。これもまた歌謡曲的世界です。

Images / Dan Hartman (1976)