あれも聴きたいこれも聴きたい-GratefulDead15
 グレイトフル・デッドの新作「ゴー・トゥ・ヘヴン」はディスコ寄りの前作の記憶も新しい中、真っ白のジャケットを身にまとったメンバー写真をジャケットにしたものですから、またまた賛否が分かれました。いつものデッドとは大きくイメージが異なります。

 裏ジャケにはいつもの汚い恰好で写ってはどうかとの意見もあったようですが却下されています。デッドのアルバム史上初めてテイラーの名前がクレジットされるという念の入れようでしたから、そんな日和った姿勢ではいけません。ここは却下して正解です。

 前作発表後、ダナとキースのゴッドショー夫妻が脱退しました。二人の仲は修復不可能になっており、離婚もしてしまいますから、バンドには重荷になっていたのでしょう。くびなのか自発的な脱退なのか、とにかくこれでけりがつけられました。

 代わりにリクルートされたのはまだ若いカントリー畑のキーボード奏者ブレント・ミッドランドです。もともとボブ・ウィアに引っ張られてウィアのバンドにいたところをジェリー・ガルシアに見初められてデッド入りしました。本作品ではいきなり自作の二曲を歌っています。

 これがファンの間で物議をかもします。ミッドランドの曲「ファー・フロム・ミー」と「イージー・トゥ・ラヴ」は作曲のみならず歌詞もミッドランドで、いずれも1980年らしい甘いAORサウンドになっています。いい曲なのですが、デッドらしくないといえばらしくありません。

 しかし、前作前々作に収録されていたダナの曲の方がデッドっぽくありませんでした。そちらに文句がつかなかったのは色物扱いされていたためではないでしょうか。それに比べればミッドランドの曲は本体に影響を与えかねない危険が察知されたのでしょう。

 アルバムは難産でした。今回、外部プロデューサーにはフォリナーで名をあげたゲーリー・ライオンズが起用されましたが、なかなかバンドと息が合いません。デッドもなかなか曲を用意できず、スタジオでの作業はかなり長期化してしまいます。

 もともとは1979年のクリスマス前の発売が目標だったそうですから、5か月近い遅れが生じてしまいました。これに懲りたのか、デッドはこの後7年間もの長きにわたってスタジオ入りを拒否します。この後しばらくはデッドの新作はライヴのみとなります。

 それはさておき、難産ではあったもののアルバムは結構充実しています。冒頭にはヒット狙いのキャッチーな「アラバマ・ゲッタウェイ」が置かれました。ガルシア=ハンター・コンビらしい軽快な曲でしたが、そこそこのヒットにとどまってしまいました。

 ハイライトはウィア作が並ぶ中盤でしょう。「フィール・ライク・ア・ストレンジャー」、「ロスト・セイラー」、「セイント・オブ・サーカムスタンス」の並びは強烈です。この頃「地獄の黙示録」に起用されたミッキー・ハートも頑張っています。ビル・クルーツマンとの短い曲が強力です。

 デッドにしてはいわばちゃんとしたアルバムなので、コアなファンにもメンバーにも受けはよろしくありませんが、新しいファンを獲得したのも事実です。全米チャートでは23位と大いにヒットしました。ライヴでの大人気が少しだけレコード売上にも反映してきました。

*2011年12月21日の記事を書き直しました。

Go To Heaven / Grateful Dead (1980 Arista)



Tracks:
01. Alabama Getaway
02. Far From Me
03. Althea
04. Feel Like A Stranger
05. Lost Sailor
06. Saint Of Circumstance
07. Antwerp's Placebo (The Plumber)
08. Easy To Love You
09. Don't Ease Me In
(bonus)
10. Peggy-O (studio outtake)
11. What'll You Raise (studio outtake)
12. Jack-A-Roe (studio outtake)
13. Althea (live)
14. Lost Sailor (live)
15. Saint Of Circumstance (live)

Personnel:
Jerry Garcia
Brent Mydland
Billy Kreutzmann
Bob Weir
Phil Lesh
Micky Hart