あれも聴きたいこれも聴きたい-FraFoa
 ご存じですか、フラ・フォア。日本のロック・バンドは新陳代謝が激しくて、油断しているとすぐに忘れられてしまいます。フラ・フォアは2001年のこのアルバムがデビュー、結局、2枚のアルバムを残しただけで2005年に解散してしまいます。

 このアルバムでは、ニルヴァーナのアルバムでの仕事で有名なスティーブ・アルビニが3曲ほどかかわっています。轟音を身上とする人です。レコード会社の力の入り方が分かるというものです。オルタナティブ・ロックのイメージです。

 アルバムを聴いていて面白いと思うのは、彼が係わった曲以外の方がより彼らしいところです。そもそも、全体にニルヴァーナ的な静と動の対比が際立つ曲作りで、とりわけ動の部分での轟音サウンドへの三上の絶唱ボーカルの乗せ方がアルビニ的です。

 フラフォアの演奏はアマチュアっぽいところもあって、上手ではなくても、その勢いと初々しさが大きな魅力でした。次の作品では、随分と大人しい作風になってしまいましたから、よりここで聴かれる初手の魅力が際立っていました。

 三上のつくる歌は、タイトルだけ見ても「澄み渡る空、その向こうに僕が見たもの」とか、「君は笑う、そして静かに眠る」とか、いかにも文学少女っぽい感覚です。ちょっと気恥ずかしくなりますが、その真剣な瞳にたじろいでしまう独特な世界です。

 もともと青臭い歌詞は好きではないですし、世代間のギャップもとても大きいものがあります。しかし、そんな私にとっても、三上の描き出す世界には、耽溺とまではいきませんが、心に染みわたるところがあって、何とも言えない気持になります。

 彼女はインタビューで、生と死についての歌詞が多い理由を聴かれて、「えっ?皆さん、そんなこと考えたりしないんですか?」と笑って答えていました。普段から本当に考えているということでしょう。歌のために無理したわけではなく、自然に内面から湧き出てくる。

 本作のベスト・トラックは、公式メルマガの人気投票によれば、「プラスチックルームと雨の庭」です。私にも全く異存はありません。ニルヴァーナ的な静と動の使い分け、轟音ギター、サビのメロディー、生命力あふれるボーカルと聴きどころの多い名曲だと思います。

 歌詞と曲のバランスが素晴らしいです。言葉がうまくメロディーとからみあって、はらわたに響く楽曲です。無謀にもカラオケで挑戦して撃沈してしまいました。「青白い月」も人気が高い曲です。こちらはアルビニ・ミックスのうちの1曲です。

 このバンドは結構なカリスマでもあります。当時は、賛辞の嵐がネット上で吹き荒れていまして、その一つ一つに結構思い入れがこもっていました。三上ちさ子の描き出す世界への共感と憧れに満ちています。復活は待望されていたバンドでした。

 彼女たちがいたことで、心のバランスをとっていたファンも多かったことと思います。歳をとるとそういうバンドは敬遠するものですが、友人に薦められて聴いてみて、その何とも切ない世界に触れて、胸の奥に火が灯ったように感じました。

Edited on 2019/3/3

Sora No Fuchi / fra-foa (2001 Toy's Factory)