あれも聴きたいこれも聴きたい-TerakuboErena2 この歳になると、若い人が活躍するのをみるのはとても楽しいです。若い頃は、嫉妬心も交じるので、手放しでというわけにはいきませんでした。ちょっと寂しいですかね。嫉妬してみたいですわ。

 しかし、年齢というものは難しいもので、常に自分を起点に年上か年下かを判断するわけですが、音楽の世界には、レコードがありますから、そのへんがぐちゃぐちゃになります。ビートルズはもちろん年上ですが、作品を発表していた時は今の私よりずっと若い。それでも、何となく年上の作品を聴いている感じがしてしまいます。逆はありませんが。

 ジャズ界は老人が跋扈していますが、やはり事情は同じで、チャーリー・パーカーは35歳、クリフォード・ブラウンに至っては26歳で亡くなっていますから、巨匠の音の中にもとても若い音が当然にあるんですよね。

 そう考えると、文句なく若いまだ10代の寺久保エレナですが、本人も言うとおり、「若いから」とひいき目にみるのはよろしくないのかもしれませんね。

 このアルバムは彼女の2枚目のリーダー作品です。ひいき目にみなくても素晴らしいと思います。正々堂々、真っ向勝負。ど真ん中に直球を投げ込んでくるような清々しさが彼女の魅力でしょう。実に正統派なモダン・ジャズに正面から取り組んでがっぷり四つです。

 世界中の音楽が聴ける今、音楽にはスタイルの革新はないと思います。むしろ、伝統的なスタイルを踏襲しながら、その限界を一歩踏み越えていくような突破力のあるなしこそが、音楽の良し悪しを決めていくような気がします。

 寺久保エレナは前作に引き続いてケニー・バロン、リー・ピアソン、そして今回はロン・カーターというベテランの一線ミュージシャンと四つに組んで大勝負を繰り広げています。前作もよかったですが、今回はさらに突破力が増した気がします。とにかく、しなやかなフレージングとスピード感がまぶしいです。バラード系にもう少し艶がでると申し分ないと思います。

 自作曲は2曲ありますが、そこはかとなく歌謡曲の匂いがするのが不思議です。何でしょう、説明しがたいのですが、ふと匂うんですね。

 ジャケットもカッコよくなりました。ファーストと同じデジパック仕様で並べると綺麗です。スタッフに愛を感じます。これも彼女の人柄ですかね。

New York Attitude / 寺久保エレナ with Legends (2011)