あれも聴きたいこれも聴きたい-DeadKennedys デッド・ケネディーズとは凄い名前です。今からは想像できないくらい、この当時はまだ「ケネディー」兄弟の記憶が鮮烈でした。そして、ボーカリストの芸名はジェロ・ビアフラ。ビアフラ戦争の記憶もまだそれほど遠い過去のことではありませんでした。ちょうどこのアルバムが発売される10年前になります。

 要するに名前だけでかなりパンクです。曲名も「貧乏人をぶっ殺せ」「大家をリンチしようぜ」「子供を殺す」「頭が病気」と並びます。「カンボジアの休日」などという曲もありますが、これはポルポト政権時代のカンボジアのことを歌っています。決してアンコールワット世界遺産めぐりなどではありません。

 デッド・ケネディーズはアメリカのパンク・バンドです。ニューヨーク・パンクがロンドンに飛び火して、その返す波でアメリカ西海岸にもパンクが登場します。その嚆矢が彼らです。この流れはやがてハードコア・パンクへとつながっていきます。

 彼らの音楽は、サーフィン音楽やロカビリーなどの影響が色濃いですが、ニューヨークやロンドンのオリジナルなパンクのバンドに比べると、とてもピュアにパンクです。やはり、自分たちで試行錯誤しながらスタイルを築いてきたオリジナルな人たちに比べると、出発点が決まっているだけに、パンクらしさを純化してきました。この方向がより進むとロックンロール的要素を排除したハードコアになるわけですね。

 発売当時はオレンジ色のジャケットだったような気がしていましたが、調べてみるとその通り。私の記憶も正しかったわけです。ただ、それはアーティストの承認していない米国仕様だったようですね。

 実は、当時はもはやポスト・パンクの百花繚乱状態だったので、デッケネは一周遅れの古臭いパンクだなとあまり真剣に聴いてはいませんでした。しかし、こうして30年の時を隔てて聴いてみると、懐かしくていいですね。アメリカらしく明るいです。底意地が悪そうにも見えますが、そうでもない。明るいスポーツ青年なのではないかと思ってしまいます。スポーツ・パンク。ハードコアに連なる純粋さが心地よいです。
 
Fresh Fruit For Rotting Vegetables / Dead Kennedys (1980)