あれも聴きたいこれも聴きたい-EdgarWinter
 このアルバムはポップ・ロック史上に残る大傑作です。誰が何と言おうと超絶の傑作です。誰も何も言わないので私が言います。どうして一般的な知名度が低いのか、当時も今も心の底から分かりません。

 私は中学校の頃、この作品をエアチェック(!)してからしばらく、寝ても覚めてもこればかり聴いておりました。今聴いてもキラキラしていて新鮮です。ロックの大きな魅力であるところの溌剌とした若さがあります。胸が熱くなります。

 本作のことを傑作だと言う人はほとんどいませんでした。エドガー・ウィンターと言えば大ヒットした「フランケンシュタイン」が少し話題になるだけでした。この作品はそこそこ売れましたがトップ10に入るほどでなく、音楽雑誌でもほとんど見かけませんでした。

 そんなわけで、発売後かなりたってからですが、雑誌「遊」誌上で、近田春夫さんがこの作品を大絶賛されたのを見た時には狂喜乱舞いたしました。それまで、私は近田春夫の音楽を大好きだという訳ではありませんでしたし、あまり関心を寄せていませんでした。

 しかし、この記事を見た時以来、近田春夫は戦友となりました。近田春夫ほど音楽を分かっている人はいない、と。随分偉そうな言い方ですが、気持は分かって頂けるのではないでしょうか。今でも「考えるヒット」はありがたく読ませて頂いています。

 本作品はエドガー・ウィンター・グループ名義での2作目になります。前作との違いはギタリストです。早弾きで有名だったロニー・モントローズから、これまた有名な美少年リック・デリンジャーに代わりました。リックは裏方から表舞台にいよいよ出てきました。

 エドガー、リックにベースのダン・ハートマンの3人はいずれもリーダー級の大物ですから、まるでビートルズ状態です。この作品でもリックがプロデュースを務めていますし、ダンは11曲中7曲を作詞作曲、1曲をエドガーと共作、5曲でリード・ボーカルもとっています。

 後に「リライト・マイ・ファイヤー」などの名曲を残すダン・ハートマンのポップ感覚がこの作品の魅力の中心にあると言っても過言ではありません。ややブルージーなエドガーをポップに引き戻す役割を果たしているようです。

 日本のレコード会社も凄いです。邦題が凄いことになっていて、「俺達は野獣だ!」に始まり、「暴虐とロマンの野獣たち」で終わります。「悪魔の少女」、「待ちわびた誘惑」、「星空にドライブ」など、原題とは無関係に強引にコンセプト・アルバム臭を醸し出していて面白いです。

 「暴虐とロマンの触発-それはロックによるエクソシズムの復活である!!」、「恐怖と旋律を巻き起こす悪魔の叫び」と大変な鼻息ですけれども、収録されているのは、たわいない歌詞、キャッチーなメロディー、きらきらしたポップな名曲ばかりです。

 ダンのポップ感覚満載の「落日のハイウェイ」や「君を抱きしめて」、エドガーのブルース魂全開の「待ちわびた誘惑」などなど、まさに捨て曲なし。永遠のフェイバリットです。私の脳内iPodには全曲収められていて、全部再生可能です。

Rewritten on 2018/6/24

Shock Treatment / The Edgar Winter Group (1974 Epic)