あれも聴きたいこれも聴きたい-PierreBarouh 私は行楽地に行くと必ず「シャッターを押してください」と頼まれてしまいます。娘に指摘されて気が付きました。そういえばよく道を尋ねられることがありますし、店員に間違われることも多いです。人が良さそうにみえるのだと自分で納得していますが、何やら軽く見られているようでもあり、写真を頼まれない迫力を身につけたいと常々思っています。

 ちょい悪親父という言い方はどうかと思いますが、フランスやイタリアの陽に焦がされた男くさいナンパな親父の魅力には素直に共鳴いたします。こういう方は恐らく気軽に写真を頼まれないのだと思います。迫力が滲み出ています。ピエール・バルーはそんな人の典型ですね。この篠山紀信のジャケ写を見てください。憧れます。

 ピエール・バルーは俳優、音楽家、映画監督です。サラヴァというレーベルを主宰して新たな才能に発表の場所を提供してもいます。憧れ度100%な完璧なキャリアと言えましょう。

 このアルバムはそんな彼が日本のミュージシャンと共演したアルバムです。音楽家の立川直樹が企画して、プロデュースした作品で、坂本龍一、高橋幸宏、加藤和彦、ムーンライダーズなどなど当時のこういう企画には必ず顔を出す面々が参加しています。たまたま日本に来ていたデヴィッド・シルビアンも参加しています。

 ピエール・バルーはフランス人ですが、シャンソンというよりもフレンチ・ボッサの火付け役のような人です。色気に溢れる歌声は非の打ちどころがありません。文句なくかっこいいです。ぞくぞくします。

 共演している日本人ミュージシャンも頑張っています。しかし、どちらかと言えば、名前を挙げた人たちの音らしい音にピエールが歌をつけたような風情が勝っていますかね。美しいと言えば美しいのですが、何だかしっくりこないところがあります。やはり企画物は企画物ということでしょうか。懐かしいですけれども。

 表題曲は、レストランでの会話から自然に音が立ちあがる毛色の変わった歌です。自分たちの肥やしとなり栄養となった芸術家や音楽家を花粉に例えている歌なのですが、よく考えると花粉ってそうだっけとやや疑問も感じます。それはそれとして、フランス人らしく、詞に重きを置いた作品なんですね。
本人による解説もついています。

 美しいアルバムに仕上がっていて、この頃のことを思い出してしみじみいたしました。

Le Pollen / Pierre Barouh (1982)