あれも聴きたいこれも聴きたい-MioFou これは発売25周年を記念して発売された紙ジャケの一品です。私は当時LPを持っていましたので、懐かしく買いました。買うまでミオ・フーが現役だとは知りませんでした。

 インナーにはバンドのお二人のほのぼのした最新インタビューが掲載されています。このCDには最新録音の音源も含まれていて、お二人そろって「あんまし昔と変わってないし」などとのほほんとしています。確かに曲の作りはそれほど変わっていないので間違ってはいないのですが、25年の歳月は声に出ています。おっちゃんとおばちゃんの声ですね。ほのぼのしました。

 さて、ミオ・フーをご紹介しますと、音大を出た美尾洋乃さんとムーンライダーズの鈴木博文さんのデュオです。83年に、パンクやニュー・ウェーブを積極的に紹介していた徳間ジャパン・レコードが、新人発掘のために立ち上げた「水族館」というレーベルからデビューしました。

 このレーベルはムーンライダーズの鈴木慶一さんがサポートしていて、「陽気な若き水族館員たち」というコンピ盤も出されました。ミオ・フーもそこに収まっています。レーベルの若いバンドが一堂に会したコンサートを見たのですが、素人バンドの集まりのようでおかしかった記憶があります。

 音の方ですが、ネオアコの流れにぽそっとはまったバンドでした。ネオアコは、80年代初めのポスト・パンク期、英国を中心に現れた、新しい感覚のアコースティック音楽を奏でるバンドの一群のことです。ネオ・アコースティック、略してネオアコと呼ばれました。チェリー・レッドやラフ・トレード、クレピュスキュールといったレーベルが中心でしたかね。

 これらのバンドは、必ずしもアコースティックにこだわっているわけではなさそうですが、パンクに比べて大人しい音楽だったので、そんな名前で一括されたものでした。それにバンドを並べてみてもそれ以外に共通点があるわけでもありません。

 このアルバムの曲の中で一番印象に残っているのは「ミラノの奇蹟」です。アルバム全体の印象を決定づけていたのですが、久しぶりに改めて聴いてみると、この曲だけ異質でした。「一曲だけそういう芯みたいのがある曲が欲しいかなと」作られた曲だそうで、ピチカート・ファイブの野宮真貴さんが美尾さんと一緒に歌っています。可愛い曲ですよ。

 この言い方だと、他の曲は芯がないとなるのですが、全体に映画のサントラのような感じだと言えば分って頂けるのではないでしょうか。「ミラノの奇蹟」もそうですが、映画から着想を得た曲もいくつかありますし、何よりも音が映像的です。サウンドを重視したバンドだったんだと思います。ジャケットの何でもない空の写真が全てを語っているようです。

 水族館レーベルは好きになれなかったのですが、ミオ・フーだけはよく聴いていたものです。今聴いても素敵です。

Mio Fou / Mio Fou (1983)

このアルバムとは直接関係ない最近の映像ですが、雰囲気は分かってもらえると思います。