あれも聴きたいこれも聴きたい-Europe
 ヨーロッパの「ファイナル・カウントダウン」は1980年代を代表する名曲です。80年代洋楽ヒットのコンピレーションを編むならば欠かせない名曲ですから、ヨーロッパというバンド名を知らない人でもこの曲を知らない人はいないでしょう。今でもよくテレビから流れてきます。

 ボーカルのジョーイ・テンペストを中心に結成されたヨーロッパはスウェーデンのタレント・コンテストで優勝してデビューしたバンドです。本作品「ザ・ファイナル・カウントダウン」はヨーロッパの名前を世界に轟かせた大ミリオン・セラーの3枚目です。

 本作品ではレイナード・スキナードやジャーニーとの仕事で知られる米国のプロデューサー・エンジニア、ケヴィン・エリソンが迎えられました。本場米国の血を入れたことで、国際的な大ヒットが実現しました。やはりこの頃の米国は断然ロック先進国でした。

 もっともヨーロッパの魅力に先に気づいていたのはまたしても日本の女性たちでした。すでに最初の2枚のアルバムの時点で、日本では次代のスターとして人気を博していたのでした。日本の女性陣の目は確かです。日本を落とせば後に大成功します。

 アルバムはタイトル曲から始まります。もともとツアーのオープニング曲として書かれたもので、シングル化することを考えていなかったそうですけれども、結果的にはシングル曲として全世界26か国でヒット・チャートのトップを飾るものすごいヒットになりました。

 所属する大手CBSレコードの国際部門では、それまで最大の売上をほこっていたワムの「ケアレス・ウィスパー」を抜いて史上最大の売上となりました。偶然ながらこの対比が面白いです。どちらも耳に残る美しいメロディーが持ち味の楽曲です。

 一言でいえば美メロのハード・ロックということになるこの曲は、それだけで思わず立ち上がってしまいそうになるイントロからして完璧な曲です。この曲の突き抜け具合は素晴らしく、80年代に若者だった人の記憶に深く深く刻まれています。

 美メロのハード・ロックは意外と難しいものです。妙にポップに流れることなく、メロディーの良さを生かして、しっかりロックするというのはなかなかの技が必要です。ヨーロッパはこのアルバムで全曲を実に丁寧に美しいメロディーでハードにロックしています。

 あまりに出来すぎているので、ヘビー・メタルに求められるざらついたところには乏しいのですが、ポップすぎるわけではなく、とても端正な作りの80年代型ハード・ロックになっています。キーボードもギターも達者ですし、リズムも王道、ハイ・トーン・ボーカルも見事。

 本作品からはアルバムのほぼ半数の5曲がシングル・カットされています。米国でのチャート・アクションだけから言えば、タイトル曲よりも「キャリー」の方が上です。ビルボードでは2位まであがっており、彼らの米国での最大のヒットになっています。

 とにかく1980年代を代表するロック・アルバムであることは間違いないのですが、一つだけ残念なのはこのジャケットです。あれだけMVはかっこいいのにこのジャケットはないでしょう。一般化してはいけませんが、北欧メタルにはあまりいいジャケットがありません。

The Final Countdown / Europe (1986 Epic)

*2011年10月26日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. The Final Countdown
02. Rock The Night
03. Carrie
04. Danger On The Track
05. Ninja
06. Cherokee
07. Time Has Come
08. Heart Of Stone
09. On The Loose
10. Love Chaser
(bonus)
11. The Final Countdown (live)
12. Danger On The Track (live)
13. Carrie (live)

Personnel:
Joey Tempest : vocal
Joh Norum : guitar, chorus
John Levén : bass
Mic Michaeli : keyboards, chorus
Ian Haugland : drums, chorus