あれも聴きたいこれも聴きたい-演歌70年代ベスト 昭和歌謡が「きてる」そうですね。昔の歌はやっぱりいい、と言う人が多いですが、当然です。昔の歌はいい歌しか生き残っていないですからね。くだらない歌ももちろんたくさんありましたが、みんな消えて行きました。

 このCDは、50歳を越えたし、演歌のCDの一つも持ってないといけないのではないかと思って、買ったもので、70年代の大ヒット作品を集めたコンピレーションです。さすがにいずれも30年以上も生きながらえているだけあって、全20曲、いずれも骨の髄まで染み込んでいました。ただ、「岸壁の母」は70年代から懐メロ扱いされていたので、ここに入るには違和感がありますね。

 この中でレコードを持っていたことがあるのは「わたし祈ってます」だけです。ムード歌謡の帝王の代表作だけあって、素晴らしい歌唱です。歌詞がまた素晴らしい。思春期の私をとらえたこの歌、私の恋愛観はこの歌によって形作られたと言ってもよいでしょう。しかし、この曲は調子外れのピアノが入る謎の曲でもあります。また、ボーカルの森本さんは、妙に一音一音はっきり唄います。小学生じゃあるまいし、ちょっと変です。

 変といえば、全体にやはり伴奏が何とも言えません。演歌と言えば、マンドリンや演歌ギター、泣きのサックスにストリングスを思い浮かべますが、多くの曲で鉄琴?木琴?の音が入るんですね。そして、編曲にばらつきがある中で、さすがに「津軽海峡・冬景色」は稀代の名曲な上に、終盤にシンセサイザーのピュンピュンいう音が入っていて感動します。

 演歌のレコードをまとめて聴いたのはほぼ初めてですが、かなり物足りないものを感じました。小柳ルミ子や石原裕次郎はともかく、その他の人々は歌手一筋の人ばかり、一曲一曲をそれこそ何万回も歌っている人です。そんな歌手にとってレコードは完成品ではなくて、始まりにすぎないんですね。歌はどんどん歌手と共に熟成されていきます。

 森進一は最近衰えが目立ちますが、40代のころ、全盛期の「襟裳岬」はレコードとは比べ物になりません。都はるみはレコードでも素晴らしいですが、やはり「北の宿から」も紅白歌合戦で聴いたヴァージョンの方が感動的でした。

 特に石川さゆりはまだ若い。これはこれで初々しくてよいのですが、昨日聴いた「津軽海峡・冬景色」の艶っぽさはやはり格別でした。この人は年ごとに違う表情を見せる人でもありますね。

 レコードにこだわる私としては、紅白歌合戦でもコンサートでもよいので、歌が熟成された後を丁寧に記録してもらえないものかなと思います。

青春歌年鑑 演歌歌謡編 70年代ベスト (2004)

圭子の夢は夜ひらく/藤圭子、私の城下町/小柳ルミ子、女のみち/宮史郎とぴんからトリオ、恋の町札幌/石原裕次郎、岸壁の母/二葉百合子、なみだ恋/八代亜紀、花街の母/金田たつえ、くちなしの花/渡哲也、なみだの操/殿さまキングス、うそ/中条きよし、襟裳岬/森進一、わたし祈ってます/敏いとうとハッピー&ブルー、昔の名前で出ています/小林旭、北の宿から/都はるみ、津軽海峡・冬景色/石川さゆり、北国の春/千昌夫、夢追い酒/渥美二郎、みちづれ/牧村三枝子、おもいで酒/小林幸子、舟唄/八代亜紀