あれも聴きたいこれも聴きたい-HosonoHaruomi 細野晴臣のYMO結成直前のアルバムになります。ソロからYMOになって一番大きな変化は、細野さんが綺麗になったということでしょう。YMOの大きな功績の一つだと思いますが、普通のロック・ミュージシャンもビジュアルに気を使うようになりました。

 この作品での細野さんは実に小汚いなりをしています。パンクやヘビメタなどの主張のある汚さとは違う、ノンポリの汚さ、それが当時のロックのありようだったんですね。

 かつて友人が、「坂本龍一は音楽がなければただの人だけど、細野晴臣は音楽がなくても出世してそうだ」と言いきっていたのが耳から離れません。逆だと言う人の方が多いのではないかと思いますが、社会人経験も深まってくると、大成功しているビジネスマンはむしろ細野さんのような感じかなと納得するようになりました。

 細野さんという人は底知れない人だと思います。

 この作品では西遊記的な誇大妄想の世界、曼荼羅の世界観に触発されたということで、イエロー・マジック・バンドの名前がつけられています。しかし、何と言えばいいのか、この作品は完成品というよりも、どこか途中の作品という気がします。作品としての質は十分すぎるくらい高いのですが、細野さんの場合は人生全体が一つの作品のようですから、どれも途中感がするのかもしれません。

 それともボーカルがいちびった感じだからでしょうか。どれもコミック・ソングのようです。そこで脱力するからでしょうかね。

 しかし、サウンドは、沖縄やハワイ、バリにレゲエ、などなどエキゾチックなパラダイス風味満載です。演奏はさすがに素晴らしく、ミュージシャンの中のミュージシャン細野晴臣の本領発揮というところです。

 不思議な作品です。「はらいそ」はポルトガル語で「天国」という意味ですが、同じ天国つながりで「帰ってきた酔っ払い」の雰囲気に通じるものがあります。

 何だか混乱してきました。混乱させる作品と言ってよいでしょう、と開き直ります。

 さて、ジャケットは曼荼羅をイメージしているようですが、ちょっとすかすかで残念です。それにタージ・マハルは場違いな気がします。

はらいそ / Harry Hosono and The Yellow Magic Band (1978)