あれも聴きたいこれも聴きたい-ShonenKnife 早いもので少年ナイフはもうデビューして30年になります。このアルバムはそれを記念して発売されたラモーンズのカバー・アルバムになります。ジャケットからしてそのまんまカバーです。「大阪ラモーンズ」は、彼女たちが昔ラモーンズのカバーを演奏する時にバンド名として使っていた言葉で、少し脱力する感じが具合のいい、センスのある名前だと思います。

 私の少年ナイフとの出会いは、30年近く前のかげろうレコードのコンピレーション・アルバムでした。そこに収められた「オウムのポリネシア」や「バナナ・フィッシュ」といった曲は、どことなく好感がもてる曲だなあと思っていました。その後、熱烈なファンになったわけではありませんが、彼女たちの活躍を聴くたびに、ほのぼのとした気持になっておりました。一度だけですが、ライブも見ています。

 少年ナイフは、やまの姉妹を中心としたガールズ・バンドです。妹さんのあつこさんは今はときどき参加という状態です。80年頃に日本にはインディーズ・バンドがそれこそ大量に出現しましたが、買い付けにきた外国人の目にとまり、海外で紹介されて成功をおさめたのは彼女たちだけです。その後、現在に至るまで海外でも活躍しており、ニルヴァーナを始め対バンは数知れず、海外勢による彼女たちのトリビュート・アルバムにはソニック・ユースなども参加するほどです。

 なぜ少年ナイフだけが?という疑問は多くの人の頭に答えのないままに放置されているのではないでしょうか。松田聖子もピンクレディーも宇多田ヒカルも倉木麻衣も出来なかったことがなぜ少年ナイフには出来たのか?

 しかし、少年ナイフを大嫌いだという人を見たことがありません。彼女たちほど大嫌いになりにくいバンドはいないのではないでしょうか。それは、おそらく彼女たちが分相応の活動を続けているからでしょう。分相応というと悪い意味にとられるかもしれませんが、決してそうではありません。かつて日本人の社会生活の基本を織りなしていた美徳です。成り上がりの反対語だと思って下さい。

 彼女たちの「分」は世界で活躍する「分」ですから、大きな「分」に違いありません。そんな活躍ぶりが身の丈にぴったりあっていて、全く無理していないところが、彼女たちの魅力です。分相応というのは難しい話で、それを30年も実践し続けるということは、それだけで世界水準です。ただ、それを世界制覇の秘訣だというと循環論法になってきそうですね。

 与太話はさておき、そんな少年ナイフの原点回帰のラモーンズ・カバー。文句なく楽しいです。彼女たちはラモーンズにも気に入られていますが、両者の姿勢はよく似ています。何とも立派なバンドをもったものです。日本は少年ナイフを誇りに思うべきです。

大阪ラモーンズ / 少年ナイフ (2011)