あれも聴きたいこれも聴きたい-Saboten サボテンは女性ばかりのバンドです。このアルバムの発売当時はまだインディーズと言う言葉はそれほど一般的ではありませんでしたから、自主製作盤という言い方をしていましたね。そんな時代の女性バンドといえば、大御所の水玉消防団、少年ナイフ、ゼルダとこのサボテンでした。この中で、メジャー・デビューを果たしたのはゼルダ、世界に飛び出したのが少年ナイフ。サボテンは大きな成功を収めたわけではありませんが、好きな人はもう大好きというバンドでした。まさか再発されないだろうと思って、LPを長い間処分できずにいましたが、めでたく91年に徳間ジャパンのWAXレコードから再発されました。

 再発されたどころか、知りませんでしたが、彼女たちは長く活動を続けていたんですね。ちょっとびっくりしましたが、こういう音楽をやる人は幸せなんでしょうから、落ち着いたペースでゆったりまったりと現役を続けられるんでしょうねえ。しみじみ。いいですね。そういえば少年ナイフも現役だし、水玉の人々も現役です。インディーズが商売になる前のまったりした自主製作盤の時代には、みんな成功するとかそんな事を思わずにただただ好きな音楽をやっていたんでしょうねえ。

 ちょっと前はネットで検索するのがとても難しかった記憶があります。世界には植物のサボテン・マニアの人が多いですからねえ。ちなみに会社にサボテン好きの先輩がいました。自席でサボテンを育てるのはもちろん、休暇にはアマゾン河を遡ってサボテンを見に行くような人でした。

 今回は一発でたどりつきましたが、公式HPの更新がなくなっています。どうしたんでしょう?

 サボテンは、このアルバム発売の頃は女性4人のバンドで、突然段ボールの妹分とも言われていました。アルバムは突然段ボールの蔦木兄弟のFLOORレーベルから発売されましたし、そもそもプロデュースがお兄さんの蔦木栄一、弟の俊二さんもギターで参加しています。突然段ボールと言われても知らない人は知らないでしょうが、また今度。

 この作品は、蔦木栄一のプロデュースらしい、音数が少なくて、すかすかなアレンジのおおらかな曲が並んでいます。基本はドラム、ベース、ギターです。ギター・バンドですね。デレク・ベイリーではなくてフレッド・フリスのような牧歌的な音です。上手だとは思いませんが、ヘタウマというのとは違うと思います。一つ一つの音がきれいでいて、明快な意思が感じられます。ロックのノリは感じられず、フリー・ミュージックというか現代音楽的なクールさです。

 LPではA面がボーカルサイド、B面がインストサイドに分かれていて、私はA面をよく聴いたものです。特に好きだったのは「低い椅子」という曲。腹が立った時に、「ぐっとおさえて、ぐっとおさえてぇ~、低い椅子」というフレーズを口ずさんでは耐えたものでした。青春時代の一こまですね。

 それはさておき、彼女たちはこの後、エリック・サティの曲をやったりします。この作品にはサティは入っていませんが、サティと親和性が高いことはよく分かります。世界に対する態度がまっすぐで真摯なんですけれども、世界の方が歪んでいるので、斜に構えたように見えてしまうようなところ。ほのぼのと無邪気な音楽なんです。コンサートを見てみたいです。

SABOTEN / SABOTEN (1982)