あれも聴きたいこれも聴きたい-PowerStation 今日はパワー・ステーションです。バンド名はニューヨークのレコーディング・スタジオの名前からとられていますが、まあ「発電所」ですね。今の日本には何と旬な名前でしょう。音楽で発電出来たらいいですよねえ。

 そういえば、かつてプロレス界には「人間発電所」ブルーノ・サンマルチノというレスラーがいました。得意技のさば折りを決めている時には激しく発電していたのかもしれません。

 それはさておき、このバンドはスーパー・グループとして随分プロモーションされたものです。メンバー構成はデュラン・デュランからアンディ・テイラー(ギター)とジョン・テイラー(ベース)、シックからトニー・トンプソン(ドラム)、ソロでその筋では有名なロバート・パーマー(ボーカル)と、名の通ったミュージシャンによるバンドだったからです。ついでにプロデュースはシックのバーナード・エドワーズです。

 しかし、デュラン・デュランは飛ぶ鳥を落とす勢いだったとはいえ、まだまだ若造でしたし、シックは活動の絶頂期を遠に越していた上に、加入したのは一番地味なトンプソンでした。ロバート・パーマーもそのソウルフルな歌声で有名でしたが、いかんせん地味な活躍しかしていませんでしたから、レコード会社のプロモーションに力が入れば入るほど、私などは「けっ」と思ったものでした。

 そうしたら、あらあら不思議、この組み合わせは素晴らしいケミストリーを生み出しました。正直、びっくりしましたね。驚いたのはバンドの面々も同じなようで、そもそも女性歌手の売り出しのための一回限りの邂逅が発展したのがこのバンドです。それに、もともと一曲ごとに違うボーカルを迎える予定だったところが、あっさりロバート一人となりました。いい話ですね。

 音楽はこれはもう80年代を代表するロックとして真っ先に浮かんできます。よく聴いてみると、デュラン・デュラン組の意図する通り、シンセ・ポップから脱却した本格的な演奏で、必ずしも「あの時の最新テクノロジー」が縦横無尽に駆使されているわけではありませんから、あの時代に密着したものではないのですが、力技で時代を引き寄せましたね。もっともドラムの音は強烈に80年代です。

 このバンドはロバート・パーマーを表舞台に引き出したことに大きな意味があります。埋もれさせるにはもったいない歌手ですから。アンディは「檻から出て」ギターをひきまくっていて、結局、このままデュラン・デュランを辞めてしまいます。超ファンキーなリズムは、この後、英国ロック界を席巻します。いろんな意味で結構大きな影響を残したバンドでした。

 いいアルバムです。

The Power Station / The Power Station (1985)