あれも聴きたいこれも聴きたい-UriahHeep
 ジャケットのイラストから雰囲気が出ています。原題は「魔術師の誕生日」、邦題は「魔の饗宴」。間違ってはいません。1970年代初頭は最も洋楽に力が入っていた時代ですから、邦題もよく考えられていてなかなかセンスがあります。

 ユーライア・ヒープは1970年代の英国ハード・ロックの雄です。日本ではレッド・ツェッペリンやディープ・パープルと並んで扱われていました。それに今なお現役です。オリジナル・メンバーはギターのミック・ボックスしか残っていないんですが、まだまだ頑張っています。

 このアルバムは彼らの5枚目のアルバムです。前作の「悪魔と魔法使い」からジャケットをロジャー・ディーンの幻想的なイラストにしています。両方のタイトルを見ますと容易に想像できる通り、ペアでとらえられる作品です。どちらもそこそこ売れました。

 一般に「対自核」から「魔の饗宴」までは三部作とされます。ユーライア・ヒープがブレイクして、そのハード・ロック・スタイルを確立させた時期の名作群として評価が高い。「幻想の世界が広がる」ヒープのハード・ロック・スタイルです。

 彼らはこのアルバムの後、1973年に来日して武道館で公演を行っています。デヴィッド・バイロンのパンタロン姿が目に染みます。どうして当時は裾がひらひらしているのがカッコいいと思ったのか、今となっては理解できませんが、かっこよく見えたんですよね、これが。

 それはさておき、この作品からのシングル・カットは一曲目の「サンライズ」です。ライブに映える曲ですが、スタジオ作は結構B級の味わいがします。とにかく大げさです。私は中学の頃にこれを聴いて感動していたんですが。

 ハード・ロック勢は比較的ロック一筋ではなくて、魔術やら何やらを曲つくりに呼び込んでくる傾向があります。おそらくドラマチックな盛り上がりを少し知的に補強しようということなのではないかと思いますが、大たい変です。

 このアルバムもコンセプト・アルバムとされていますが、本当にそうなのか疑問を感じます。組曲形式の作品もありますからコンセプトありなのかもしれませんが、悩ましいです。全体に溌剌とした演奏を聴かせるアルバムですが、そんなところは駄目駄目な感じもします。

 言ってみれば、ユーライア・ヒープの音楽は70年代英国ハード・ロックの最良の部分と駄目な部分を両方持っています。そのために評論家の方々もどうも歯切れが悪い。ただし、その駄目さ加減が私の心のフックになっているんですが。

 愛すべきバンドです。ネットで現在のライブで同じ曲を演奏しているものを見ると、今の方がずっと素晴らしい演奏です。年輪を重ねて凄くなったかと思いますが、オリジナル・メンバーが一人しか残っていませんから、複雑な気がします。

 ところで、ライナーノーツに伊藤政則氏が、「たった一度の来日公演で見せたライブにおけるURIAH HEEPの弱点にファンは大いなるショックを受ける」と書いていますが、どういう意味なんでしょう。気になる一文です。

Edited on 2018/3/14

The Magician's Birthday / Uriah Heep (1972 Bronze)