あれも聴きたいこれも聴きたい-Hihokan 秘宝感とは、「心に秘められた宝物のような感覚」という後付けの意味もあるそうですが、もちろんあの秘宝館にちなんだ名前です。場所は熱海だそうです。

 秘宝館って一体何なんでしょうね。結構全国にあります。まだまだ新婚だった頃、妻を連れて行って、凄く嫌がられたことがあります。全体にピンクな薄暗い館内に、男根や女陰をかたどった世界各地の御神体のようなものが展示してあったり、自分のおちんちんを投げ縄にして牛を捕まえたカーボーイといった性豪伝説のパネル展示などがあったりと、実に下らないものだった記憶があります。

 人間は皆スケベエである、という命題は真実かもしれませんが、スケベな人間はこういうものが好きなはずだという大きくずれてはいるものの盤石な自信に充ち溢れていて、それが清々しい、そんな場所です。面白い場所ですね。今はコンピュータを駆使して凄いことになっているんでしょうか。

 このバンドは、ドラムスの斉藤良のリーダーバンドです。ピアノにスガダイロー、ベースに佐藤えりか、サックスに纐纈雅代のカルテットに、熱海宝子という秘宝館な女性が加わったフリー・ジャズのバンドです。

 70年代フリー・ジャズの香りがするようなことが雑誌に書いてありましたが、あんまりそんな感じはしません。ピアノは現代音楽的なノリが持ち味ですし、録音のせいなのかもこもこしたベースがおだんご状に迫ってきます。サックスは力強いブローだし、ドラムは自身がリーダーということで気持よさそうに叩いています。そんなこんなで、とても素敵な音です。

 それで秘宝館的要素はどうかというと、それほどではありません。熱海宝子の出番がもう少し多くてもよかったのではないでしょうか。お約束のあえぎ声も入っているのですが、どちらかというと出産時の呼吸のようです。もっとベタな秘宝館的ボーカルが聴きたいわけですが、ライブを見た人の感想を読むと、結構活躍しているようですから、CD化に際して大人しめになったんでしょう。

 宝子さんは、このバンドだけの芸名です。いろんなキャラクターで活躍中ですが、両手がフランス・パンのバゲット・バルドーというのが私は一番好きです。ジェロのPVに出演したりもされているようで、面白いキャラクターだと思います。セカンドでは魅力全開でお願いしたいものです。

 動画が見当たりませんでしたので、バゲット・バルドーをご紹介します。この中で少し歌っている「コンタクト」という曲がバージョン違いですが、このアルバムに収録されています。

 ぜひライブを見に行こうと思いました。期待しています。

秘宝感 / 秘宝感 (2011)