あれも聴きたいこれも聴きたい-OmShantiOm
 「オーム・シャンティ・オーム」は私が最初に買ったインド映画のDVDです。何と懐かしいことでしょう。日本でも後に「恋する輪廻」と副題を添えて公開されました。インド映画への愛に満ち満ちた傑作に最初に出会えたことはとても幸運なことでした。

 映画のあらすじは、大切な女性を殺された男が生まれ変わって犯人に復讐するというものです。実は、この映画のタイトル「オーム・シャンティ・オーム」を見ただけでインド人にはこのストーリーがぴんとくる仕掛けになっています。

 かつて大ヒットした同じようなプロットの映画がありました。それは「カーズ」という映画で、その中に「オーム・シャンティ・オーム」という曲があります。映画の冒頭にもさりげなく「カーズ」のポスターが出てきますし、インドの常識の一つといってよい話です。

 劇中で使われる歌はもろに昔のボリウッド歌謡のパロディーになっています。ジャケットも日本の方にはスルーされそうですが、昔のインド映画の雰囲気をだしています。劇中の細かいセリフ回しやはさまれるエピソードにもボリウッドの内輪ネタ満載です。

 極めつけは「ディーワンギ・ディーワンギ」という曲で、綺羅星のごときボリウッド・スターが顔を出していて、さながらボリウッド映画検定のようです。曲の方にもインドを代表するシンガーが5人も顔をそろえていますから凄いです。

 映画のヒーローは推定年収30億円とも言われるスーパースターのシャールク・カーン、ヒロインはスーパーモデル出身の信じがたいほど綺麗なディーピカ・パドゥコーネで、この作品がスーパースターとなることを運命づけられた彼女のデビュー作になります。

 音楽は、ロック・バンドもやっているヴィシャールとインド古典音楽の歌手シェカールの二人組が手掛けています。二人の持ち味が見事に融合された作風で、内外の音楽を折衷してボリウッド音楽界に新風を送り込んだ音楽制作者コンビです。

 全体にテーマとなるメロディーがあり、それが繰り返し出てきます。「カーズ」もそうでした。70年頃の映画音楽風あり、ミュージカル調あり、宗教音楽風あり、歌謡調あり、ディスコありとバラエティーに富んだ作りとなっています。さぞかし楽しかったことでしょう。

 一押しは「メン・アガル・カフーン」。インドの大衆歌謡ガザル風の曲ですが、リズムはワルツです。当代随一の男声歌手ソヌー・ニガムの艶やかな歌唱と、これまた一二を争う女性歌手シュレヤ・ゴシャールの美しい声の掛け合い。典型的なフィルム・ソングです。素敵です。

 インド映画通にはもちろん「ディーワンギ・ディーワンギ」なんですが、曲だけ聴いてもなかなか魅力が分かりにくいのが玉に瑕です。また、インド国内で当時一番話題になったのは「ダルド・エ・ディスコ」。「悲しみのディスコ」という意味です。シャールクの6パック・ソングです。

 ところで、この映画のエンド・ロールでは、裏方さんまで含めてスタッフが顔だしで紹介されています。心温まるエンディングです。そんなところにまで心を配る女性監督ファラ・カーンの文句のない傑作です。ちなみに監督は片付けの最中に登場して戸惑う仕様となっています。

Om Shanti Om / Vishal & Shekhar (2007 TSeries)

*2011年6月11日の記事を書き直しました。



Songs:
01. Ajab Si
02. Dard-E-Disco
03. Deewangi Deewangi
04. Main Agar Kahoon
05. Jag Soona Soona Lage
06. Dhoom Taana
07. Dastaan-E-Om Shanti Om
08. Dard-E-Disco (remix)
09. Deewangi (rainbow mix)
10. Om Shanti Om (medley mix)
11. Dastaan (the dark side mix)
12. Om Shanti Om (theme music)

Personnel:
KK, Sukhwinder Singh, Marianne, Nisha, Caralisa, Shaan, Udit Narayan, Shreya Ghoshal, Sunidhi Chauhan, Rahul Saxena, Sonu Nigam, Rahat Fateh Ali Khan, Richa Sharma, Abhjeet : vocal