あれも聴きたいこれも聴きたい-JohnScofield
 ギターをポロロン、ポロロンと奏でるという言い方はよく聴きます。しかし、実際にはなかなかポロロンと響くギターにお目にかかれません。ロックですと、ギュイーンとかジャカジャカになりますし、クラシックだとビンビン、デレレンということになるでしょうか。

 ところが、ジャズの世界では時々お目にかかることができます。ジョン・スコフィールドのこのアルバムはまさにそうです。ポロロン、ポロロン弾いています。他にもジム・ホールやウェス・モンゴメリーなどもポロロン系ですかね。パット・メセニーもたまにそうです。

 若い頃にはジャズ・ギターがあまり好きではありませんでしたが、歳をとるに従って、こういうポロロン系ジャズ・ギターも楽しめるようになってきました。あるサイトをみていましたら、このアルバムが40代、50代のジャズ売上チャートの上位にランクインしていました。

 自分だけの変化かと思っていると、大たい周りもそんなもんです。これが年齢を重ねるということなのでしょう。ジョン・スコフィールドのギター・サウンドは、齢を重ねて毒気が抜けてきた中高年の友には最適です。

 ジョン・スコフィールド自身ももう60歳になる米国のジャズ・ギタリストで、マイルス・デイヴィスやらハービー・ハンコック、日野兄弟などと共演しています。最近ではジャム・バンド風に即興主体で活動していているようです。

 この作品は自身のリーダー作でドラム、ベース、ピアノとギターのカルテットとなっています。バラードばかりを集めた作品ですから、さらに耳に優しい。バラードですから余計にポロロンポロロンしています。

 あんまりポロロンしすぎると「魅惑のギター・ムード」などと題されていたかつての「ムード音楽」を思い出しそうです。昔は一大ジャンルでした。歌謡曲やスタンダードをとりあえずムーディーに演奏したLPが大量に販売されていました。

 しかし、この作品のポロロンはさすがにちゃんとしたバンド・サウンドですから、インタープレイには緊張感が漂っています。ムード音楽などとは一線を画していて、とてもかっこいいです。それによく聴くと普通の音ではありません。独特のフレージングです。

 それもそのはずでスコフィールドは天才ジャズ・ギタリストと呼ばれていて、そのアウトフレージングなる弾き方が彼の代名詞となっています。なるほど、そのフレージングから独特の緊張感が生まれてくるわけですね。

 そんなスコフィールドは作品ごとにテーマを設定する人で、前作はゴスペル、本作はバラード。考え抜かれた選曲です。オリジナルは12曲中5曲。ジャズのスタンダードに加えてポール・マッカートニーの「アイ・ウィル」も選曲されています。

 サイドを固める面々も名うてのミュージシャンばかりで、ソウルフルであったり、カントリー風であったり、ストレートなジャズであったりと、多彩なサウンドを紡ぎ出し、ポロロン、ポロロンなるギターの顔を引き立てています。いい感じです。

Rewritten on 2018/3/31

A Moment's Peace / John Scofield (2011 Emarcy)