あれも聴きたいこれも聴きたい-Santana
 伝説のアルバムです。もはや音楽作品であることを超えた事件でした。発売されたのは1974年、私が中学生の頃です。LP3枚組に22面ジャケットの作品は中学生には手の届かないお品でした。

 おこずかいに不自由しない友人O君が買ったというニュースを聴きつけて、皆で見に行ったことを覚えています。「すごいなあ」と感嘆しながらジャケットを開いてみました。ただ、音を聴いた記憶がありません。もうジャケットを見ただけで腹いっぱいになってしまいました。

 CDで再発された時には2枚組でしたが、2006年にソニーから紙ジャケ復刻されて、3枚組に戻りました。22面ジャケットまで復刻された上に音も改善されて、「ロータス魂」というブックレットを添えたこの上ない愛にあふれた復刻となっています。

 そのブックレットを読むと、想像以上にお祭りだったことが分かります。日本のCBSソニーの主導で作った作品だということで、スタッフはほとんどが日本人、日本の意地を見せつけた一大ドラマが展開されていたわけです。皆さん熱い熱い。

 ただ、ジャケットをデザインした横尾忠則さんだけが、結構冷めています。本作品制作時に両者は初めて会ったそうですが、同じような精神世界を旅している二人は大いに意気投合しました。そんな二人にとっては、「ロータス」は通過点に過ぎないということです。

 ブックレットにある通り、これはもう文化遺産と言っていいでしょう。表ジャケットは大日如来ですが、その他のジャケットにはヒンドゥー教、仏教、キリスト教の絵が並び、ピラミッドまであります。CDサイズではインパクトに欠けますが、それでもその精神は伝わってきます。

 ライブは1973年7月3日と4日に大阪厚生年金ホールにて行われました。バンドは、ニュー・サンタナ・バンドとなっており、グレッグ・ローリーやニール・ショーンのジャーニー組はもういません。「ウェルカム」の頃のサンタナ・バンドです。

 カルロス・サンタナがインド人のグルーに帰依してスピリチュアル全開の頃のライブです。それらしく、冒頭には一分間の「瞑想」が行われます。もちろんその後はちゃんと「僕のリズムを聞いとくれ」や「ブラック・マジック・ウーマン」などのヒット曲もやってくれます。

 宗教色が強いと言っても、サンタナはやはりエンターテイナーです。初期の頃の猥雑な感じがまだ残っていて、勢いのあるラテン・ロックを聴かせてくれます。サンタナの歌うようなギターが鳴り響いて、ファンにはたまらないライブです。

 録音も素晴らしく、とても73年の来日公演を録音したものとは思えません。とにかくスタッフ陣の熱気が凄いです。サンタナも「セイヴァー」を「ミスター・ウドー」と改名して、その一端に答えています。

 それにしても、サンタナ本人というより、何度もしつこいですが、スタッフの熱さがひしひしと伝わってきて、胸を焦がすアルバムに仕上がっています。洋楽が特別なものだった時代、アーティストに無邪気に胸をときめかせた素晴らしい時代のモニュメントです。

Edited on 2015/7/5

Lotus / Santana (1974 CBSソニー)