あれも聴きたいこれも聴きたい-RobertJohnson
 ロバート・ジョンソンのテイク違いも含む全録音を収録した3枚組です。LPを忠実に再現ということで3枚組になったもので、かつてはCD2枚組で出ていましたから、ボリュームとしてはさほどではありません。

 ロバート・ジョンソンは悪魔に魂を売ったと噂されるミシシッピのデルタ・ブルースの王様です。彼の残した数少ない録音をテイク違いも含めて全て収録したのがこの作品です。たったこれだけで、今に至るも甚大な影響を与えているすごい人です。

 私はブルースにはかねがね民族の壁を感じてきていました。ロックを聴いていても、ブルース臭の少ないものを好んできました。そんな私がブルースを受け入れられるようになったのは40歳を過ぎた頃からです。

 それなのに、今では、時々無性にブルースを聴きたくなることがあります。それもこのロバート・ジョンソンのブルースを聴きたくなるんです。決して過去の音楽ではありません。今も生き生きと輝いている凄い音楽ですから。

 いろんな音楽にはまる人がいますが、ブルースにはまった人というのが一番深いです。ロックやジャズ、クラシックにはまったサラリーマンは珍しくありません。しかし、ブルースにはまると人生のすべてをブルースに捧げるので、サラリーマンなどとは両立しません。

 ブルースに魅せられた人には男っぽい人が多いと思います。私は自身が全く男らしくないので、そういう人には憧れるのですけれども、どうにも実生活ではそういう人との付き合いが希薄になります。女に生れていればよかったのかもしれません。

 なんだかくどくどと実に男らしくないですが、そんな私にもロバート・ジョンソンは輝いています。彼の全レコーディングを網羅した3枚組のCDを聴きとおすと、丸一日ブルースな気分が続きます。腹の底から生きる力が湧いてくるのが不思議です。

 サウンドは、ギターの弾き語りですが、そう言われてみないと分からないほど、普通にイメージする弾き語りとは違います。一人オーケストラのようなギターですし、ロバジョンの声がまた胸にずしんと響きます。超重量級です。

 ロバジョンの後ろには、キース・リチャーズやエリック・クラプトンが控えています。クラプトンなどは「25になるまで、ロバート・ジョンソンを知らない奴とは口をきかなかった」そうですから凄いものです。

 日本では、「踊るポンポコリン」で有名なB.B.クイーンズの近藤房之助が信奉者の代表です。彼がロバート・ジョンソンを語る時にはまるで子供のようです。愛と尊敬がダイレクトに伝わってきます。

 そんな強者たちがいる中で、ほとんどブルースに縁のない私などにはロバート・ジョンソンを語る資格は全くありません。それでも、後ろの方の立見席からそっとロバート・ジョンソンの魂に合掌していたいと思います。

Edited on 2017/11/5

The Complete Recordings / Robert Johnson (1936/1937 Vocalion)