あれも聴きたいこれも聴きたい-DieKrupps
 ディー・クルップスはEBM:エレクトリック・ボディー・ミュージックと呼ばれるジャンルの重要バンドなのですが、彼らのデビューはちょうどジャーマン・ニュー・ウェーブ、ノイエ・ドイッチェ・ヴェレの時期でしたから、私にはむしろそちらの代表格として馴染みが深いです。

 彼らは1979年に結成されており、これがデビュー作品の「製鉄所交響曲」です。ディー・ラディーラーなどと同じくズィックザック・レコードからの発売です。このCDはそこにシングル盤の「真の作品、真の報酬」を加え、さらに「製鉄所交響曲」のライブ音源を加えた素敵な作品です。

 スリーブを開けてみますと、グッズのカタログになっています。Tシャツやセーター、帽子にパンツ、ステッカーにビデオとなかなか充実しています。それを見ると、彼らのトレードマークは鋼鉄の輪っかと飛行船、キャッチフレーズはメタル・マシーン・ミュージックです。

 音の方も含めて、ノイエ・ドイッチェ・ヴェレ諧謔派とは随分毛色が違います。「製鉄所交響曲」はドラムとベースによるゆったりとうねる重い反復ビートが延々と続き、その上に叫び声や金属を叩く音が飛び交う曲です。AB面合わせて30分弱、延々と同じビートが続きます。

 これに対してシングル曲の方は、ビートがデジタル・ビートに代わります。ドラマーのクレジットが消えてパーカッションとなりました。メタル・パーカッションは健在で音が多彩になり、カラフルな仕上がりです。歌もちゃんと入っていて、結局、DAFのようになってしまいました。

 クラウト・ロックの重鎮カンのスタジオで録音され、これまたクラウト・ロックの大御所コニー・プランクのスタジオでミックスされています。彼らの音楽にはカンやアモン・デュール2から連なるクラウト・ロックの血が脈々と流れていることが良く分かります。

 私はどちらかと言うとあまり変化のないアルバム曲の方が好きですが、クルップスは1989年にシングル曲をニッツァー・ウェブと組んでリメイクしたことで、一躍その名を高めます。さらにメタリカのカバー集が人気となったことで、ますます人気を博していくことになります。

 彼らは鋼鉄製の楽器を自作しています。シュターロフォンと呼ばれる楽器がそれです。さらにはクレジットには「ドリル」の文字があります。後にノイバウテンなどに引き継がれていく削岩機のことでしょうか。それともジャケットにある小ぶりのドリル?

 ゲストも含めて全員がギターやドラムなどの通常楽器に加えてシュターロフォンなどを扱っているところが、クルップス・サウンドの最大の特徴です。サウンドは聞き覚えがありますが、音楽で使われるのは斬新という意味での衝撃的なサウンドです。

 その点ではこれが文字通りのメタル・ミュージックですね。それにシングル曲からはマシーンであるヘビーなシンセを多用していますから、ルー・リードの問題作とは関係なく、こちらこそが言葉本来の意味でメタル・マシーン・ミュージックと言えましょう。

 これがさらに一般化してエレクトロニック・ボディー・ミュージックとなるわけで、先駆者として高く評価されるべきでしょう。金属音がこれほど気持がいいとは発見でした。お日様の光によく合う音です。妙に日和ることもなく、信ずるところを愚直に進む爽やかな作品と言えましょう。

Stahlwerkshinfonie / Die Krupps (1981 Zickzack)

*2011年4月24日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Stahlwerksinfonie A
02. Stahlwerksinfonie B
(bonus)
03. Wahre Arbeit - Wahrer Lohn
04. Lohn / Arbeit
05. Stahlwerksinfonie live

Personnel:
Jurgen Engler : guitar, steel, voice
Bernward Malaka : bass, steel, drill, voice
Frank Köllges : drums, steel, drill, voice
Ralf Dörper : percussion, steel, voice
Eva Gößling : sax, steel
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Peter Hein : steel, voice