あれも聴きたいこれも聴きたい-Trio
 ノイエ・ドイッチェ・ヴェレ最大のヒットはこのトリオの「ダーダーダー」です。野太い男の声で♪あはあはあは♪と始まるこの間抜けな曲はヨーロッパで大ヒットしたのでした。ドイツで2位、イギリスで7位、ヨーロッパだけで300万枚を売り上げたといいますからすごいです。

 ついでに、ブラジルやカナダでも売れたんだそうです。さらに、1997年にはフォルクスワーゲンが米国でTVコマーシャルにこの曲を使って米国でもちょっとしたヒットになりました。日本でもいついかなる瞬間にブレイクしないとも限りません。それほどの名曲です。

 この作品はビートルズのお友達、クラウス・フォアマンのプロデュースで1981年に発売されたのですが、1982年に「ダーダーダー」がヒットすると、第3版からは「ダーダーダー」を入れた形で発売されています。これはCDですから、もちろん第3版であると思います。

 CDを買い始めたのは1984年くらいからですが、このCDはかなり早い時期に手に入れました。スリーブの一面全部を使ってCDとは何か説明が書いてあります。懐かしいですね。CDの寿命は20年くらいと言われたりもしますが、なかなかどうしてまだまだ鳴っています。

 初期の頃のCDは音も悪いですし、だいぶ売り払ってしまったのですが、これはきっと売り払うと二度と手に入るまいと思ってずっと持っています。初期のCDは特にベースの音がひどいんですが、このバンドはベースレスですから、それほど音も悪くありませんしね。

 トリオはノイエ・ドイッチェ・ヴェレのスターですが、本人たちは「ニュー・ジャーマン・ハピネス」と呼ばれたがっていたそうです。とてもよい話です。パンクだとかニュー・ウェイブとなると深刻になりがちですが、彼らのそういう姿勢は皆無です。

 当時、友人宅でパーティーをやった時に、この曲の12インチ・シングルを持参してBGMにかけたところ、会話が一瞬途切れ、場がとても和やかな雰囲気に包まれたことを覚えています。「ハピネス」そのものでした。

 どの曲もそうですが、とてもシンプルです。トリオはその名の通り、ボーカル、ギター、ドラムの三人組で、時々シンセのピコピコ音やおもちゃのような電子音が入ります。ピロレーターと違い、電子音さえ超アナログです。

 ボーカルは英語とドイツ語ちゃんぽんでこれもシンプルに歌います。ギターもソロはなく、ドラムもバスドラ、スネア、ハイハットとシンバル一つという構成。歌詞は♪ダーダーダー、ぼくはおまえを愛していない おまえはぼくを愛していない♪なんて実に他愛もありません。

 コメディー・バンドのようですあ、音数を抑えに抑えた演奏はなかなかのものです。ストイックな感じがします。曲の骨格だけで勝負する姿勢が潔いと思います。信じる道を突き進む覚悟を感じます。再評価の機運が高いのも当然です。だれかコマーシャルに使いませんか?

 しかし、彼らをニュー・ジャーマン・ハピネスと呼ぶ人は多くなさそうです。私もそう呼ばれるのをほとんど聴いたことがありません。その理由は簡単です。PVを見ていただければ分かります。変態なんですね。

Edited on 2017/10/28

Trio / Trio (1981 Mercury)