あれも聴きたいこれも聴きたい-DerPlan
 ノイエ・ドイッチェ・ヴェレ、すなわちジャーマン・ニュー・ウェイヴの旗手デア・プランです。このたび、いつもお世話になっているキャプテン・トリップさんから紙ジャケで再発されました。万歳がいいのか合掌がいいのか迷うところですが、とにかく快挙であると言っていいと思います。

 パンクの後、ニュー・ウェーブの時代になって、いきなりドイツが活気づきました。それがノイエ・ドイッチェ・ヴェレです。突如として出現したバンドの数々に興奮したものです。デア・プランはその中でもパイオニアとしての地位をほしいままにしています。

 もう一つのパイオニアであるDAF(独米友好)とは初期の頃にメンバーが交錯しています。ジャーマン・プログレの頃の人脈図と似たような印象を受けます。ドイツのこういう音楽サークルは狭いからこそ、才能あふれる人々が寄り集まってしまうのでしょう。

 デア・プランは、フランク・フェンスターマッハーとモーリッツ・ライヒェルトを中心に誕生しました。二人はヨーゼフ・ボイス門下生だそうで、デュッセルドルフにアート・ギャラリーを開設しました。そして、カイ・ホルンを加えた三人で音楽活動を始めます。

 それが、ヴェルトアウフシュタンズプラン、すなわち世界転覆計画という名前のバンドです。カイが脱退すると世界転覆は頓挫し、シンプルにデア・プランとなりました。定冠詞付きの「計画」ですから、より世界転覆の企みが本格化したとも読めますね。

 ピロレーターことクルト・ダールケはシンセを購入したことからこの一味に引き込まれ、まずはDAF、そしてやがてデア・プランに合流します。彼のおかげでようやく音楽らしくなった模様です。それまではどんなだったのかと心配になります。

 この作品は彼らのアート・ギャラリーから名前をとった自主レーベル、アタ・タックから発表されたデア・プランのデビュー作品です。ちなみに、アタ・タックはハンブルグのズィックザックと並んでノイエ・ドイッチェ・ヴェレの中核となっていきます。

 デア・プランの音楽はローファイの電子ポップです。クラフトワークとレジデンツに影響を受けたと言われている通りの音の系統に属します。しかし、ローファイは死なず。ローファイはどの時代もローファイ、返って古びないものです。

 デア・プランは、「ゲリ・ライク」を作るには、アイデアさえあれば何もいらないと言っています。悪戯心に充ちたアイデアが彼らの真骨頂です。アイデアだけの音楽作品。それだからこそ古びないともいえます。

 彼らのパフォーマンスの写真を見ると、表現主義映画の不朽の名作「カリガリ博士」とダダイスト、フーゴ・バルの有名な写真を思い起こします。そのまんま。表現の仕方がダダ的です。一連のダダイストが今の時代に生きていたら、まずはこんな音楽をやったでしょう。

 発売当時、実は私は彼らのことはそれほどかってはいませんでした。ふざけていながらも、どこか妙に真面目で息苦しいなと思いました。あれから30年を経て、久しぶりに聴いてみると、そんな風に思った私も真面目すぎたと反省、お気楽に存分に楽しむことができました。

Edited on 2017/10/21

Geri Reig / Der Plan (1980 Ata Tak)