あれも聴きたいこれも聴きたい-Silverhead
 ビートルズがアップル・レコードを設立して以降、大物アーティストがレーベルを設立することが流行りました。ローリング・ストーンズ・レコード、レッド・ツェッペリンのスワン・ソング、EL&Pのマンティコアなどなど。当時の業界事情が知れます。

 ディープ・パープルもご多聞に漏れずパープル・レコードを設立します。ほとんどの作品はパープルがらみなで、その数少ない例外がこのシルヴァーヘッドです。何の脈絡があるのかと思います。強いて言えば第一期と通じるものがあるのかもしれません。

 恐るべきシルヴァーヘッドはグラム・ロックの範疇で語られることが多いです。ジャケットを見れば一目瞭然です。中心人物マイケル・デ・バレスはしっかり化粧をしていて、この超パンタロン姿はグラムそのものです。

 しかし、時は1972年。グラム・ロックは終末期を迎えんとしていました。遅すぎたグラム・スターだったわけです。後発だけにグラム・ロック的なイメージは純化していて強烈ですから、後から振り返ってみるとグラム・ロックそのものに見えてくるからあら不思議。

 本作の原題は「シルバーヘッド」です。これを「恐るべきシルバーヘッド」としたのはなかなかいいセンスです。ちなみに次作は当初「16歳で犯されて」とされていました。さすがにプロモーションしにくいのか、今では「凶暴の美学」に変更されています。

 彼らは、本国イギリスよりも日本での人気が高かったようで、日本オンリーでライブ・アルバムが発売されたりしています。確かに当時の日本でのプロモーションはなかなかのもので、私もこのバンドは強烈に印象に残っています。

 シルヴァーヘッドは今も俳優として活動しているというマイケル・デ・バレスが音楽をやりたくてつくったバンドです。メンバーはメロディー・メーカー誌で公募したといいます。「エロティックでリラックスしたミュージシャン求む」という募集広告でした。

 マイケル本人は貴族の出身で大金持ち、演劇学校で勉強した人で、「キャッツ」でおなじみのあのアンドリュー・ロイド・ウェーバーなどとも知り合いです。俳優稼業は今でも続けているそうで、とにかくキャラの立った人であることは間違いありません。

 サウンドはシンプルなブリティッシュ・ロックです。あまりルーズな感じはしないので、ハード・ロックに近いと言えます。大貫憲章氏によれば「ほんもののブリティッシュ・ハード・ロッカー」です。マイケルのキャラはまだあまり活かされていませんが、怪しい雰囲気はありました。

 狙った方向ではあるでしょうが、必ずしも目指した通りの音とはなっていない模様です。というのも、急造バンドだけに演奏能力に大いに問題があったからです。そのちぐはぐさがこのバンドの魅力です。妖しいカリスマが一人気を吐いている。

 恐るべきシルヴァーヘッド。今の若い人が聴くと「恐るべき」と思うのではないでしょうか。「うちのバンドの方がうまい。うーん、恐るべき。」と多くの学生さんや下積みミュージシャンは思うでしょう。時代を感じます。私など懐かしくて微笑ましく感じます。

Edited on 2017/10/9

Silverhead / Silverhead (1972 Purple)