あれも聴きたいこれも聴きたい-EP-4-2
 EP-4による5・21プロジェクトの片割れです。「昭和大赦」はメジャーの日本コロンビアから、この「マルチレベル・ホラーキー」はインディーズのテレグラフから。時代は下って、神聖かまってちゃんが時を隔ててメジャーとインディーズからの同時発売を達成しました。ちなみに。

 「昭和大赦」とは異なり、さすがはインディーズです。こちらは無事に5月21日に発売されています。クリア・ビニールのオリジナルLPを再現しているため、解説はとても読みにくいですが、CDケースは感涙ものです。

 発売元はオート・モッドなども手掛けていた当時の自主制作大手テレグラフです。ただし、EP-4のライブを企画していた会社はスケーティング・ベアーズというカセット・テープを主体とするレーベルを持っていましたから、両者の共同制作の形をとっています。

 副題に示されている通り、本作品は1980年から83年までに行われたEP-4のライブ録音をコレクションしたものです。詳しい解説はありませんが、数多くのライブ音源から寄せ集められた模様です。

 「昭和大赦」はメジャーからの発売らしく、とてもすっきりした音になっていましたが、こちらは自主製作盤らしく音は悪いし、ライブの寄せ集め方も雑然としています。その分、より彼らの姿が赤裸々に現われているとも言えるかもしれません。

 サンクス・クレジットに坂本龍一と並んでPファンクのバーニー・ウォーレルの名前があるところが目を惹きます。実際にどのようなかかわり方をしたのか、はっきりとは書かれていませんが、恐らく実際に演奏しているのではないでしょうか。

 佐藤薫にはRNAオーガニズムというプロジェクトがあり、ロック・マガジンのヴァニティ・レコードからLPが発売されていました。そちらのジェームズ・ブラウンのカバーは鳥肌ものでした。そのアプローチはバーニー的と言えなくもありません。相性はよさそうです。

 実際、アルバム後半にはバーニーらしいピュンピュンしたキーボードの音が入っています。それにそのあたりの部分だけは明らかに音質がいいです。また坂本龍一はEP-4のライブにキーボードで参加したことがあるとの情報もあります。収録されていてほしい。

 相変わらずの極東ファンクぶりですが、「昭和大赦」とは異なって、彼のボイス・パフォーマンスも入っています。それがいい味を出しています。ギターも随分と活躍しています。全体に音が悪いのでアマチュアリズムあふれる感じもして、私は「昭和大赦」よりも好きです。

 しかし、同じライブということでタコのセカンドと比べられると随分と分が悪い気がします。タコのレコードの発売や今回の再発にこだわったのは佐藤薫だそうですが、彼が山崎春美や大里俊晴の存在を必要としていたのだなあということがよく分かります。

 センスも抜群にいいし、頭もすごくいい。だけれども、破天荒な突き抜け方はやや苦手。佐藤さんはそんな真面目な人なんじゃないかと思います。ライナーで毛利嘉孝氏が主張しているシチュアシオニズムにも正面から取り組んでいたのかもしれません。

Rewritten on 2017/10/1

Multilevel Holarchy / EP-4 (1983 テレグラフ)