あれも聴きたいこれも聴きたい-Tako2
 タコの二枚目はライブ盤のミニLPでした。強烈なジャケットは有名なイラストレーターである霜田恵美子さんです。ヘタウマの代表格などと言われていましたが、とにかく強烈です。ほのぼのしていて色使いがとても美しいと思います。

 ファーストのタコとはすっかり違って、ここでのタコはバンドです。音楽的なところはサイバー・ファンクな佐藤薫が中心になっています。反復するリズム・トラックを彼が作り出して、その上に大里俊晴のフリーキーなギターが縦横無尽にかき鳴らされます。

 そんな演奏をバックに山崎春美がヴォイス・パフォーマンスを繰り広げる。そんな作品です。もう一人、評論家の野々村文宏がプリペアード・ピアノで参加していますが、これは関係ない人までステージにいたという、タコのタコたる所以の証明のようなものです。

 トラックはパンク/ニュー・ウェイブ時代のインダストリアル系で、何と言いましょうか、キャバレー・ボルテールやワイヤーとかそんな感じもします。今のクラブでも通用しそうです。クラブには行ったことがありませんが...。

 山崎のヴォイスが凄いです。歌詞を歌うわけではなく、♪草葉の陰から呪い続けてやる♪といった単発のフレーズが繰り返されます。そんな中でも、しつこく繰り返される謝罪の言葉♪ごめんなさい、本当にすいません、ご迷惑をおかけしました♪云々が凄いです。

 山崎春美によれば、「生まれ落ちたことを君たちに代わって詫びているのさ」ということです。これは深い。存在に内在する撞着を正面から受け止めるには一旦謝罪するしかありません。一生をかけて私たちに代わって謝罪を続けたのは、たとえばキリスト、たとえばブッダ。

 山崎春美は教祖でした。当時燎原の火のように広がった日本のパンク/ニュー・ウェイブ・シーンにおいて、山崎の果たした役割はとても大きいです。彼はこの後もぶれることなく山崎のままで歳をとっていきます。凄い人です。

 ファーストの何でもありのオムニバスからセカンドのかっちりとまとまったバンドまで、山崎春美のやることは振れ幅が大きいですが、私が惹かれたのはみっともない醜態の中に立ち上る凛とした香気だったのかもしれません。本当に教祖に近い。

 本作品は1982年11月22日に法政大学学館ホールにて行われたライブの模様を収録したライブ盤です。当初は「うまい」が題名だとされていました。再発に当たって1983年5月28日の同志社大学学館ホールでのライブが追加され、「タコ・セカンド」となりました。

 追加トラックは山崎と佐藤の二人は同じですけれども、大里と野々村はおらず、ギターの好機タツオともう一人、誰だかわからない人が参加しています。これもとてもタコらしい。タコは「共同体」です。「あるいは『回路』か」。

 山崎は「ボクは『タコ』という共同体に帰化していた ボクが主宰していた と見られていて それはそのとおりなのか知れなくても やはり ボクは『タコ』に ビロングしてたんだ」と書いています。山崎とタコ、永遠にもつれ合っています。

Edited on 2017/9/18

Tako Second (Live) / Taco (1984 ピナコテカ)