あれも聴きたいこれも聴きたい-AutoMod
 オート・モッドのシングル「ラヴ・ジェネレーション」は1981年に発売されました。写真家の地引雄一氏が立ち上げた自主制作レーベル、テレグラフ・レコードからの記念すべき第一弾です。私は、高田馬場のレコード店オーパス・ワンに出来た自主制作コーナーで買いました。

 当時、自主制作レーベルは雨後のタケノコのようにどんどん出来てきましたが、このテレグラフはかなりしっかりとした活動を続けた希有な例です。現在、当時のレコードが続々と再発されています。これもその一つ、シングル三枚を一枚にまとめたコンピレーションです。

 オート・モッドは、ボーカルのジュネのバンドです。彼は当時のアンダーグラウンド・シーンになくてはならない存在で、日本のゴスの先駆者とも言われます。そして、オートモッドには後にあの布袋寅泰も参加した時期があります。

 この作品は結成当初の作品です。嬉しいことに、ジュネ自身が当時の活動を振り返って語り下ろしたライナー・ノーツがついています。これがとにかく面白い。当時のシーンのことが大変よく分かります。

 ただ、そこに入っていくと何となく同窓会のようでちょっとゆるい感じです。私自身は時々ライヴを見に行く程度の単なる自主制作レコード・コレクターなので、ほとんどのグループは匿名に等しかったので、こうしたインナー情報は鑑賞には少し邪魔です。

 当時、オート・モッドは「ラヴ・ジェネレーション」を買っただけでした。他の曲も聴いたことはあるはずですが、今回、改めて聴いてみても、「ラヴ・ジェネレーション」所収の3曲以外はほとんど記憶に残っていませんでした。曲調から何から全然違うのでびっくりです。

 そういうわけで私にとってのオート・モッドは「ラヴ・ジェネレーション」だけです。表題曲はスカっぽいパンク・ロックで、なかなかよく出来ています。ちょっといちびりのチリチリ声はTレックスのマーク・ボランの影響のようですが、そこも含めてアマチュア然としたところが素敵です。

 久しぶりに聴きましたが、意外なことにジャニーズが歌ってもおかしくない曲です。KAT-TUNとかTOKIOとか。彼らの歌にはにちょっと時代を感じさせる昭和ロックがあります。「ラブ・ジェネレーション」もその中に置いて違和感がありません。

 二曲目は「ポルノ雑誌の女」。これはジュネ曰くグループ・サウンズ(GS)のパロディーだということです。ぺらぺらの60年代ギターがやけに新鮮でした。歌詞はポルノ雑誌のモデルを襲うという猟奇的なもので、気味が悪いですが、曲は可愛いものでした。

 三曲目が「ホラー」。本人はキリング・ジョークだとおっしゃってます。バンドとしてやりたいことが割とストレートに出たんでしょう。ナチの演説がコラージュされていたり、後のゴスを思わせる演出です。ただ、♪ほらほらほらほらホラー♪なんですけどね。

 そんなシングルを私は大好きでした。これぞ自主製作盤の醍醐味だと思ったものです。日本のパンクとして、ちょっとレトロな感覚とパンクかくあるべしの歌詞とボーカル。黎明期の熱気がありました。私にとってはテレビでよく見る「懐かしの歌」のパンク版です。

Edited on 2017/9/18

Telegraph Singles / Auto-Mod (2010 Telegraph)