あれも聴きたいこれも聴きたい-ProcolHarum3
 プロコル・ハルムの三作目はやはり傑作だと言われています。「大人しく聴いていれば、全部傑作じゃないか」と言われるかもしれませんが、これを傑作と言う人が一番多いようですから、傑作の中の傑作ですかね。

 このジャケットは古い煙草のパッケージをモチーフにしています。アルバム・ジャケット百選といった企画があると結構入選することが多い素敵なジャケットです。詩をつくっているキース・リードのガールフレンドが手掛けたそうです。いいガールフレンドを持ったものです。

 今回、初めてプロデュースをオルガンのマシュー・フィッシャーが手掛けています。最初のアルバムではオルガンとピアノ主体だったのが、二枚目でギターが活躍するようになり、三枚目ではサウンド・エフェクトやストリングスを多用するという絵に描いたような進化ぶりです。

 今回も詩はすべてキース・リードが作っていますが、曲はリーダーでピアノのゲイリー・ブルッカー、ジミヘン好きなギタリストのロビン・トロワー、そしてフィッシャーの三人が手掛けています。自分で作った歌は自分が歌うとばかりにボーカルもその三人がとっています。

 フィッシャーに至っては、プロデューサーであることをいいことに、自分の曲では楽器もほとんど一人で手掛けているとのことです。バンド内での比重が高まったのですけれども、それはバンドのバランスを崩すことにもなります。脱退への道筋が見えてきました。

 この三人の楽曲はかなりテイストが違います。ロビンの曲はそれこそジミヘンばりのギターばりばりの曲ですし、フィッシャーの曲は相変わらずクラシカルなものです。やはりブルッカーの曲が一番プロコル・ハルムらしいR&Bテイストなプログレ風です。

 三者三様ですが、ここではぎりぎりそのバランスがとれていて、それが傑作と言われる所以になっています。しかし、これはもちろん長く続かない。本当にぎりぎりだったんでしょう。フィッシャーはアルバム収録後に辞めてしまいます。

 プロデューサーが一番に辞めるところが他のバンドと違うところです。フィッシャーはその後、名曲「青い影」の作曲印税を求めて訴訟をおこし、勝訴します。ドラマです。この頃のロック・バンドはよく訴訟合戦になっていたものです。

 冒頭のタイトル曲はプロコル・ハルムが初めてオーケストラを使った曲です。ちょっと意外な気もします。以前には使っていなかったのかと思ってしまいます。それほど彼らの音楽はオーケストラと相性が良いです。

 ジャケットから想像できる通り、「ソルティ・ドッグ」は船乗りの歌です。そして、何となくアルバム全体を覆うコンセプトになっているように思われます。プログレッシブ・ロックの面目躍如たるところです。キース・リードの役割は大きいです。

 本国よりも人気のあった米国で制作を開始しながら、結局、大半を英国に戻ってから完成しています。とても英国的なバンドだと思うのですが、なかなか英国での成功につながらないとおろに、よりディープな英国を感じます。そんなところまでとても英国的です。

Edited on 2017/9/16

A Salty Dog / Procol Harum (1969 Cube)