あれも聴きたいこれも聴きたい-ProcolHarum
 「青い影」です。プロコル・ハルムのこの曲は60年代ヒット曲のコンピレーションには必ずと言っていいほど収録されていました。それにもかかわらず彼らのLP作品はほとんど入手できない時期が長く続きました。一発屋だと思っている人も多いかもしれません。

 プロコル・ハルムはシングル曲「青い影」でデビューしました。瞬く間に英国で1位となった他、米国でも大した宣伝もしていないのに5位、その後も曲は忘れ去られることなく、1000万枚以上を売り上げています。

 バッハに影響を受けたと言われるオルガンの響きをバックに難解な歌詞をソウルフルに歌うこの曲は日本でも大いに人気を博しました。今でも折に触れてコマーシャルで使われたりするので、ほとんどの人が御存じだと思います。

 デビュー曲が世界的な大ヒット作になってしまいましたが、彼らは結構地味なグループです。地味ながらもその後も着実にキャリアを重ねて、イギリス・ローカルなイメージで人気を博しました。私は実は後期の方が好きだったりもします。

 大たい名前がラテン語っていうところが洒落てます。プロデューサーの飼い猫の名前からとったとされていますが、そんな名前を猫に付ける人も付ける人です。そのイメージは専属の作詞家キース・リードの書くシュールで難解な歌詞がさらに強化しています。

 このアルバムの頃のプロコル・ハルムを特徴付けるのは何と言ってもマシュー・フィッシャーのオルガンです。ギターにジミヘンかぶれのロビン・トロワーがいるにもかかわらず、ほとんどギターが目立ちません。

 これは珍しいことです。リーダーでボーカルもとるゲイリー・ブルッカーのピアノとともにキーボードが全体を支配しているんです。ところが、面白いことにゲイリー・ブルッカーの歌声はおっさん臭くて実にソウルフルです。キーボード主体のバンドらしくありません。

 また、ドラムスのB.J.ウィルソンはレッド・ツェッペリンの誘われたことがあるそうで、リズム隊も充実しています。ブルースの影響も色濃く、彼らはイギリスのザ・バンドとも言われたようにとてもアーシーな味わいを持っているんです。

 ただし、「青い影」は急造バンドで録音されています。まさか大ヒットすると思わなかったんでしょう。すぐにメンバーはブルッカーの昔馴染みのトロワ―とウィルソンに交代しました。どたばたぶりが面白いです。

 このアルバムには当然「青い影」が入っていますが、実は発売当時は収録されていませんでした。トップ10ヒットとなった「ホンバーグ」はこのCDでもボーナス扱いですし、シングル曲を入れないアルバム作りは数多くの編集盤に結実して、彼らのカタログをややこしくしました。

 そんなわけでどうにもこのアルバムを聴いていると居心地が悪いです。ようやくこうしてオリジナルに近い形を落ち着いて聴いてみると、全体に佳曲が並んでいて、オルガンとピアノの調べを堪能してしみじみします。ただ、どうしても「青い影」が全体を覆っているんですが。

Edited on 2017/9/16

A Whiter Shade Of Pale / Procol Harum (1967 Cube)